1986 Fiscal Year Annual Research Report
白血病細胞分化に伴なうc-fos遺伝子発現におけるCa∂の役割
Project/Area Number |
61571044
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
野瀬 清 東大, 医科学研究所, 助教授 (70012747)
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Keywords | がん遺伝子 / 発癌促進物質 / カルシウム / 転写制御 / フォルボールエスエル / 白血病細胞 |
Research Abstract |
ヒト白血病細胞U937を用い、フォルボールエステル(PDD)およびカルシウムイオノフォア【A_(23187)】によるc-fos遺伝子転写誘導の機構を解析した。c-fos誘導はいずれの物質によっても誘起され、これら2種の誘導剤の作用は相加的であった。また、PDD処理しPDD不感受性になった細胞では、PDDによりc-fos誘導は起こらないが【A_(23187)】では起こり、逆の場合も同様であった。従って、PDDと【A_(23187)】の作用は少なくとも部分的に異なった経路に仂くと考えられた。 2つの誘導剤によるc-fos誘導における【Ca^(2+)】の必要性を、阻害剤を用いて検討した。PDDによる誘導は、カルシウム拮抗剤ベラパミール、【Ba^(2+)】,【La^(2+)】,EGTAなどの影響を受けなかったが、【A_(23187)】による誘導はこれらのいずれによっても強く阻害された。これらの結果から、【A_(23187)】によるc-fos誘導には細胞内への【Ca^(2+)】の流入が必須だが、PDDによる誘導には不用であると結論された。 いずれの誘導剤によるc-fos誘導は、Ca-依存性キナーゼ(C-キナーゼ)阻害剤H-7により転写レベルで阻害されたが、CAMP依存性キナーゼ阻害剤H-9では阻害されなかった。また、C-キナーゼを直接活性化するジグリセリドがc-fosを誘導した。これらの結果は、c-fos転写活性化には、C-キナーゼが必要であり重要なシグナルとなっていることを示唆する。【A_(23187)】による誘導の場合は、多量の【Ca^(2+)】の細胞内への流入により、C-キナーゼの活性化が起こるためと想像される。 C-キナーゼによるc-fos誘導の機構を明らかにするためには、今後c-fos遺伝子の転写調節領域に直接作用する因子の検索が重要と考えられる。現在、この因子を検出するため、c-fos遺伝子のサブクローンを分離し検討中である。
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[Publications] Namba,Masayoshi: International Journal of Cancer. 37. 419-423 (1986)
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[Publications] Nose,Kiyoshi: Journal of Biochemistry. 99. 1385-1391 (1986)
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[Publications] Sato,Chikako: Proceedings of National Academy of Sciences,U.S.A.83. 7287-7291 (1986)
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[Publications] Shibanuma,Motoko: European Journal of Biochemistry. (1987)