1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61571085
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Research Institution | Tokyo Metropolitan Institute for Neuroscience |
Principal Investigator |
杉下 守弘 神経科学総研, その他, 研究員 (10114513)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
亀和田 文子 (財)東京都神経科学総合研究所, リハビリテーション研究室, 主事 (80177609)
石原 直毅 (財)美原記念病院, 院長
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Keywords | 失語症 / 失語症の回復 / CTスキャン |
Research Abstract |
失語症は発症後1〜2年でのみ著しい回復がみられるが、その後は回復が乏しいというのが定説である。しかし、発症後5年以上の追跡を行った研究はほとんどない。また、回復が著しい例があっても、従来はCTスキャンによって脳損傷の部位や広がりを知ることができなかったので、たまたま損傷部位が言語領を少ししか損傷していないとか、損傷が小さいために回復が良かったのではないかという判断を受けた。我々は(1)発症後5年以上経過しており、(2)CTスキャンを発症時にとってある症例で、(3)しかも発症後1〜3ヵ月で失語症検査のしてある症例を対象として、失語症が発症後5〜10年経過するとどの程度回復するかを検討した。 【I】発症後10年以上経過しており、発症時全失語であった30名の追跡調査を行なったところ、16名が死亡、5名が再発していた。残りの9名のうち7名を検査できた。このうち3名は著しく回復しており、一例は全失語から純粋語唖となっていた。残り2例は全般的に著しい回復がみられた。回復要因としては発症年令が60才以前であることと、患者の学習努力が考えられた。大脳損傷部位については左中大脳動脈灌流領域の広汎な損傷であっても損傷が深くない場合は回復が良い可能性が示唆された。 【II】発症後5年以上経過しており、発症当時ブローカ失語やウェルニッケ失語であった症例各3例を追跡調査した。これらの症例のうち2例は50才以前に発症した患者で回復は著しく、日常会話ではほとんど言語障害に気付かれない程度に回復していた。これらの症例は損傷が小さいわけではなかった。 今後、症例を加え、退院後にどのような言語学習を行ったか、回復の程度とCTスキャン上の損傷部位・大きさとの関連について結論に達したい。
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