1986 Fiscal Year Annual Research Report
加齢による抗菌性化学療法剤の組織蓄積変動の定量的解析
Project/Area Number |
61571094
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
辻 彰 金沢大, 薬学部, 教授 (10019664)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
玉井 郁巳 金沢大学, 薬学部, 教務職員 (20155237)
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Keywords | 組織分布 / ジプペチド輸送系 / 抗菌性抗生物質 / 加齢変動 |
Research Abstract |
本研究の目的は、薬物の組織移行の変動要因を生体機能の変動と連動させた定量的評価法を確立することにある。このために、本研究では細菌感染症治療薬、特にβ-ラクタム抗生物質について、1)腸管、肝臓、腎臓における細胞膜輸送機構、2)血清蛋白結合機構、および3)組織分布の加齢変動の決定因子の解明とそのヒトへの外挿、の3項目について詳細な研究を行い、次の結果を得た。1)ラット小腸刷子縁膜小胞による実験より、β-ラクタム抗生物質はその6位または7位側鎖にα-アミノ基の有無にかかわらず、ジペプチド輸送担体に認識され、その一部のものは【N^(a+)】非依存的に【H^+】と共輸送によって小腸内に取込まれるが、肝・賢臓細胞膜における輸送にはジペプチド輸送担体の関与がないかまたは少ないという新しい発見を得た。また、2)β-ラクタム抗生物質の非処理臓器への分布は、1〜100週令ラットに共通して、細胞間液中への局在化とここに存在するアルブミン(Alb)とのみ結合することによって決定されることを明らかにすると共に、この組織分布性を生理学的薬物連度論モデルによって数式化することに成功した。またこの関係は、ヒト末熟児におよび小児においても正しく成立することを、トブラマイシンを同時投与して細胞外液量のマーカとして用いるという斬新な手法を用いて実証した。3)なお、この時、加齢による抗生物質の血清蛋白結合率の著しい変動は、ラットにおいては遊離脂肪酸/Alb濃度比の変動によって生ずるが、未熟児においては間接ビリルビン/Alb濃度比の変動に起因することが明らかとなった。この種による相違はAlbの構造の相違に基づくものと推察された。以上の研究によって、当所に計画した申請研究をほぼ満足に達成し得た。この成果は、特定組織への薬物蓄積性を避け、最大有効性を期待した抗菌剤の投与設計や新規物質の開発に貢献するものと思われる。
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[Publications] Akira Tsuji: Journal of Pharmacy and Pharmacology. 39. (1987)
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[Publications] Tetsuya Terasaki: Journal of Pharmaceutical Sciences. 7l. (1987)
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[Publications] Tetsuya Terasaki: Journal of Antibiotics. 40. (1987)