Research Abstract |
安定同位体(SI)トレーサー法によるヒスチジン血症の診断法開発を目指すなかで, GC-MS-SIMによる血中ヒスチジンと主代謝物ウロカニン酸の微量定量法の確立を行った. 本研究では, ヒスチジンの体内動態を明らかにするため, ヒトへSI標識ヒスチジン(L=His=^2H_2,^<15>N_2)が投与される. ヒスチジン測定の検量線は, 血中濃度5〜2000ng/mL plasmaの範囲にわたり, 良好な直線性(r=0.9999)を示した. 測定には, もう1つのSI標識ヒスチジン(DL-His-^2H_4,^<15>N_2)を内部標準物質として用いられた. 本法は, intra-assayとして, CV=2.5〜3.9%, intra-assayとして, CV=1.1〜1.4%, また予測値との相対誤差は5%以内という極めて高い分析精度を提供した. 分析感度は, GC-MSへの絶対注入量として50pgが検出可能であった. これにより, 投与由来のヒスチジン(L-His-^2H_2,^<15>N_2)と食餌・生合成由来の内因性ヒスチジン(L-His)をそれぞれ区別しながら, 微量定量できることが明らかとなった. 一方, 投与されたSI標識ヒスチジン(L-His-^2H_2,^<15>N_2)の代謝物である標識ウロカニン酸(Uroc-^2H_1,^<15>N_2)と, 内因性ウロカニン酸の生体内挙動を明らかにするため, もう1つのSI標識ウロカニン酸(Uroc-^2H_3,^<15>N_2)をGC-MS-SIM測定の内部標準物質として用い, 血中ウロカニン酸の定量法について検討した. その結果, GC-MS分析の前処理段階として, 生体試料中からの抽出・精製法およびGC誘導化法の一連の操作法には, ヒスチジンのそれと全く同一方法が適用できることが明らかとなった. この事は, ヒスチジンとその代謝物であるウロカニン酸の両者を, 投与由来と内因性由来のものとをそれぞれ区別しながら, 同時に定量できることを示している. なお, ウロカニン酸に関する分析精度については, 現在検討中であるが, GC-MSへの注入絶対量として, 50pgが検出できることから, ヒスチジンと同様に, 精度・感度ともに優れた測定法が確立できるものと考えられる.
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