1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61580047
|
Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
大橋 裕二 お茶大, 理学部, 助教授 (40016118)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
堀 佳也子 お茶の水女子大学, 理学部, 助手 (70029891)
|
Keywords | 光異性化反応 / 結晶場の効果 / コバロキシム錯体 / ラセミ化反応 / 結晶相反応 / β-α異性化反応 / 結晶解析 / 反応空間 |
Research Abstract |
表記研究課題を解明するために、2つのテーマについて研究を進めた。第1のコバロキシム錯体のラセミ化反応については、軸配位子を2種の置換ピリジンに置き換えた錯体結晶を調製し、X線照射による変化を調べたところ格子定数の変化は少ないが、キラルな活性基がラセミ化することを照射初期と充分照射後の構造解析の結果から確かめた。この結晶相ラセミ化反応はこれまでとは異なる新しい様式のラセミ化である。活性基が反転してラセミ化するときの動きやすさの目やすとなる反応空間の大きさを計算してみた。すると格子定数の変化から見積った反応速度は同程度の大きさの反応空間をもつ錯体結晶よりずっと速く、これまで確立されていた反応空間の大きさと反応速度の関係に矛盾する。そこで結晶を紛末状にして光によるラセミ比速度を旋光度の変化で調べると、その反応速度は反応空間の大きさとよく対応している。このことから変化の小さいときは格子定数の変化からラセミ化速度を見積るのは適当でないことが明らかになった。第2のβ-α異性化反応については、軸配位子を4種の置換ピリジンに置き換えた錯体結晶を調製した。これらの結晶構造を解析し、反応速度を測定したところ、反応速度は活性基のコンホメーションの違いに大きく依存すること、同じコンホメーションの場合は活性基の反応空間の大きさに依存することが明らかになった。しかしアミノ基をもつ置換ピリシン錯体の場合は、小さな反応空間で大きな反応速度を与え、上の経験則から大きくはずれている。この理由はアミノ基が活性基と水素結合しているためであり、この水素結合が反応の遷移状態を安定化させることによって、反応を促進させたためである。結論として、ラセミ化反応もβ-α異性化反応も反応空間が反応速度を決める大きな要因なのであり、特に他に理由がなければ、反応空間の大きさが結晶場の効果を定量的に表わす目やすとなると言える。
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] Akira Uchida: Nature. 320. 51-52 (1986)
-
[Publications] Yuji Ohashi: Journal of the American Chemical Society. 108. 1196-1202 (1986)
-
[Publications] Yuji Ohashi: Acta Crystallographica.
-
[Publications] Yuji Ohashi: Acta Crystallographica.