1986 Fiscal Year Annual Research Report
硫黄化合物における硫黄原子の原子価拡張と電子密度分布の研究
Project/Area Number |
61580048
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Research Institution | The University of Electro-Communications |
Principal Investigator |
岩崎 不二子 電通大, 電気通信学部, 助教授 (10017329)
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Keywords | 有機硫黄化合物 / 原子価拡張 / X線結晶構造解析 / 電子密度分布 / 低温X線回析 / 分子内相互作用 |
Research Abstract |
硫黄原子の原子価拡張(Hypevalency,硫黄原子が電子吸引性のS,N,O,ハロゲンなどと単結合より長く、van der Waals距離より短い結合を示す)について、その結合の本質を明らかにするため、1.原子価拡張性に関連する有機硫黄化合物のX線結晶構造解析、2.低温X線回折実験によるHypervalentな硫黄化合物の電子密度分布の研究を行った。 1.N,N´-ジメチル-2,2´-ジチオジベンズアミド及びN-メチル-2-ベンジルスルフィニルベンズアミドのX線結晶構造解析を行ない、分子内S…O間の距離は2.890【A!°】,2.712【A!°】であった。これは0-ニトロフェニルチオ化合物のS…O距離より長いが、von der Waals距離より短かく、硫黄の原子価拡張に基く短かい分子内非結合S…O相互作用を持つことが明らかとなった。前者は分子間N-H…O=C水素結合(N…O2.813【A!°】)、後者は分子間N-H…O=S水素結合(2.845【A!°】)を形成しているが、分子内S…O相互作用が比較的弱いのは、このような分子間水素結合形成と関係があると思われる。 2.原子価拡張性を示す硫黄原子の結合について検討するため、等距離S-N結合を持つチアチオフテン型化合物について173KのX線回折実験を行なった。解析の結果、分子平面内S-C,C-N間に結合による電子密度の歪みが観測された。原子価拡張性結合であるS-N間にはNに近い点で弱いピークが見られた。この他に硫黄原子の周辺に分子面内に4個、硫黄の上下に2個のピークが八面体型に存在する結果が得られ、硫黄原子のd電子との関連が考えられる。また硫黄や炭素原子の近傍では電子が不足している状態を示し、窒素の近くでは電子が過剰であることが得られ、この状況はCNDO/2で求めたnet chargeの計算結果と傾向が一致している。前記のジメチルジチオジベンズアミドについても低温実験を行ない、現在解析中である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] F.Iwasaki: Acta Crystallogr.Sect.C. 42. 121-124 (1986)
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[Publications] F.Iwasaki: Acta Crystallogr.Sect.C. 42. 124-127 (1986)
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[Publications] F.Iwasaki: Acta Crystallogr.Sect.C. 43. 80-83 (1987)
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[Publications] F.Iwasaki: Bull.Chem.Soc.Jpn.60. 1255-1259 (1987)
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[Publications] F.Iwasaki: Acta Crystallogr.
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[Publications] F.Iwasaki: Acta Crystallogr.
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[Publications] F.Iwasaki: Bull.Chem.Soc.Jpn.
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[Publications] F.Iwasaki: Acta Crystallogr.