1986 Fiscal Year Annual Research Report
ウサギ胸腺ステロイド感受性細胞の糖鎖修復機構と免疫系における役割
Project/Area Number |
61580132
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩森 正男 東大, 医学部, 助手 (90110022)
|
Keywords | ステロイド感受性胸腺皮質未熟細胞 / ガングリオシド / N-グリコリルノイラミン酸 / ラクト系列 / ノイラミニダーゼ感受性 / 胸腺髄質細胞 |
Research Abstract |
T細胞サブセットの表現形質を各種モノクローナル抗体を用いて解析する試みがマウスやヒトについて活発に行われ、免疫系での役割を調べる研究に用いられている。しかし、胸腺におけるT細胞表現形質の分子的背景については不明な点が多い。複合糖鎖、特に糖脂質のT細胞での発現様式と糖鎖修飾を調べるため、ウサギ胸腺細胞亜集団の糖脂質組成を調べた。先に胸腺特異的糖脂質として同定されたN-グリコリルノイラミン酸を含むラクト-N-ノルヘキサオシルセラミドとラクト-N-ネオテトラオシルセラミドは主に胸腺皮質ステロイド感受性未熟細胞に分布しており、いずれも胸腺細胞自体のノイラミニダーゼ処理によってシアル酸が除かれることから、反応性に富む膜上配位を持っていることがわかった。胸腺細胞に含有される他のガングリオシドのノイラミニダーゼに対する反応性は非常に低い。ノイラミニダーゼ処理後の胸腺細胞をガラクトースオキシダーゼと放射性水素化ホウ素ナトリウムを用いて標識し、ステロイド処理後48時間目のウサギ血中に投与したところ、大部分の放射能が胸腺組織に分布しており、放射能は中性糖脂質ではなく、N-グリコリルノイラミン酸を含むガングリオシド画分に検出された。このことは、胸腺細胞ガングリオシドのアシアロ体が、胸腺へのホーミングレセプターに関与しており、また、胸腺において受ける糖鎖修飾がシアリル化であることを示している。一方、胸腺マトリックス細胞、もしくはステロイド耐性胸腺細胞に特異的に分布している分子には、脂肪酸鎖の長いN-アセチルノイラミン酸を含むGM3があった。糖脂質、特にガングリオシドにおける分子種構成のこのような顕著な違いは、T細胞分化過程における細胞表面糖鎖の重要性を指摘しており、分子レベルでその詳細を把握する契機を与えているように思われる。
|
-
[Publications] Iwamori,M.;Kiguchi,K.;Kanno,M.;Kitagawa,M.;Nagai,Y.: Biochemistry. 25. 889-896 (1986)
-
[Publications] Iwamori,M.;Sunada,S.;Ishihara,E.;Moki,M.;Fujimoto,S.;Nagai,Y.: FEBS Letters. 198. 66-70 (1986)
-
[Publications] Takamizawa,K.;Iwamori,M.;Kozaki,S.;Sakaguchi,G.;Tanaka,R.;Takayama,H.;Nagai,Y.: FEBS Letters. 201. 229-232 (1986)
-
[Publications] Takamizawa,K.;Iwamori,M.;Mutai,M.;Nagai,Y.: Journal of Biological Chemistry. 261. 5625-5630 (1986)
-
[Publications] Masuda,K.;Iuchi,I.;Iwamori,M.;Nagai,Y.;Yamagami,K.: The Journal of Experimental Zoology. 238. 261-265 (1986)
-
[Publications] Takamizawa,K.;Iwamori,M.;Mutai,M.;Nagai,Y.: Biochimica et Biophysica Acta. 879. 73-77 (1986)