1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61580163
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Research Institution | Teikyo University |
Principal Investigator |
笠原 道弘 帝京大, 医学部, 教授 (40010102)
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Keywords | リサイクリング / インシュリン / インスリン / 糖輸送 / S6 / 脂胞細胞 / 情報伝達 / リン酸化 |
Research Abstract |
脂肪細胞はインシュリン投与による代謝活動の調節作用が顕著でホルモンによる代謝活性調節の研究の代表的な例としてよく用いられてきた。特に、インシュリン投与による糖輸送活性の上昇については詳細に調べられ、この上昇が糖輸送体のリサイクリングにより起こっていることを明らかにしてきた。本年度はこの小胞輸送による糖輸送体の細胞内局在性を変える機構を明らかにする目的で細胞内での情報伝達の経路について検討し、以下のことを新たに見出した。 1.インシュリン投与にともない、顕著にリン酸化されるタンパク質が見つかり、分子量,等電点,抗体との交叉性からリボゾームタンパク質【S_6】と同定された。この【S_6】のリン酸化にはインシュリンに対する濃度依存性、リン酸化の時間経過、代謝活動の活性化の阻害剤の効果、インシュリン様作用を持つ薬剤に対する効果から、細胞内でのインシュリン情報伝達の主要経路あるいは主要経路に近接する経路に位置していることが明らかとなった。細胞内情報伝達をin vitroで再構成出来る可能性が生れた。 2.リセプターの内在化の阻害剤により【S_6】のリン酸化及び糖輸送の活性化が阻害された。リセプターの内在化の意味についてはこれまで不明であったが、内在化されたリセプターからインシュリン受容の情報が伝ることが想定出来る。 3.リサイクリングと情報伝達に関与する因子の検索とそれら因子のかかわる過程を明らかにするため遺伝学的解析を導入した。リサイクリングに関与することの明らかな2つの遺伝子SEC2及びSEC23を酵母の染色体からクローニングした。四因子分析から該当の遺伝子であることを確認した。シークエンシングと動物細胞での相同遺伝子の検索をめざしている。
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[Publications] O.Ezaki: J.Biol.Chem.261. 3295-3305 (1986)
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[Publications] M.Kasahara: Biochim.Biophys・Acta. 856. 615-623 (1986)
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[Publications] 江崎治: 生化学. 58. 277-281 (1986)
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[Publications] 笠原道弘: 医学のあゆみ. 137. 516-517 (1986)
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[Publications] 笠原道弘: "続生化学実験法講座3膜脂質と血漿タンパク質(下)第24章" 東京化学同人, 756 (1986)