1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61810005
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
安川 克己 神戸大, 理学部, 教授 (20020084)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
久保 弘幸 兵庫県教育委員会, 社会教育文化財課, 技術職員
藤田 淳 兵庫県教育委員会, 社会教育文化財課, 技術職員
山下 秀樹 平安博物館, 助手 (80158162)
井口 博夫 神戸大学, 理学部, 教務職員 (40112073)
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Keywords | 旧石器遺跡 / 炉床 / たき火 / 浮熱 / 古地磁気 / 磁気的性質 / モデル実験 / 磁化強度 |
Research Abstract |
旧石器遺跡における炉床を決定するために、床面土壌の磁気的性質の違いに注目して、1.モデル実験と、2.1.に基づいて実際の旧石器遺跡での炉床決定を行った。1.神戸大学農学部付属農場敷地内において、約10時間薪を燃やし続けた後、約半日熾火の状態を保った。その間、熱電対によりたき火を横切る測線上及び中心付近の鉛直方向の測線上計14点で温度変化を測定し、レコーダーで温度の連続記録を得た。また、磁化測定用試料を土壌表面及び表面下から、たき火前後で計84個採取した。たき火中心の表面で約400℃、表面下5cmで約100℃、同じく10cmで約90℃の温度上昇が見られた。たき火前後での土壌の磁気的性質は上昇温度に比例して変化した。たき火後には残留磁化強度が最大約100倍だけ強くなり、その安定性も増加した。400℃まで温度上昇した表面の土壌は交流消磁実験において、その磁化強度の安定性がたき火前のものの約2倍、磁化方向の安定性は3倍の消磁段階までに増加した。100℃以下の温度上昇に留った土壌の残留磁化は、強度に関しては著しい変化を示さなかった。しかし、その方向は偏角にして30度、伏角にして40度程度変化しており、試料間での集中度は向上した。2.上述のモデル実験で得られた残留磁化の定性的な変化を基準として、岐阜県日野及び山形県お仲林の2つの旧石器遺跡において炉床の決定を試みた。各遺跡から採取した土壌試料はそれぞれ1380個及び763個であった。超伝導磁力計によるそれらの残留磁化測定及び交流消磁実験による磁化の安定性の検討の結果、お仲林遺跡の3ケ所で明瞭に磁気的性質の違う土壌試料を見いだした。その地点がかつての炉床であろうと推定した。一方、日野遺跡の試料からは磁気的性質が明らかに違うものを見いださなかった。これらの試料の残留磁化が元来不安定であるためと考えられる。この違跡における炉床の有無の判定法について、現在検討中である。
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