1986 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
61840006
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
谷川 庄一郎 筑大, 物質工学系, 助教授 (90011080)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
石井 晃 日本学術振興会, 特別研究員
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Keywords | 低速陽電子 / 陽電子回折 / 超低エネルギー陽電子回折 / LEED / RHEED / ポジトロニウム生成 |
Research Abstract |
電子を利用した表面の構造解析は、当初LEEDが瀕用されたが、その理論的取扱いの困難さのために、現在では、RHEEDが主流となっている。本研究では、理論的取扱いが容易で、かつ、表面構造に敏感であると考えられる超低エネルギー陽電子回折(VLEPD)装置の試作を目的とした。昭和61年度は、この目的のために、静電収束型の低速陽電子実験装置の製作を行った。陽電子をタングステン,ニッケル等の金属に入射してやると、陽電子は金属内部でエネルギーを失い一部は表面から放出される。このとき放出される陽電子は、その金属の仕事関数に相当する単一のエネルギーを持ち、表面に垂直方向に放出されることが知られている。従って低速の陽電子を加速して径を絞り金属単結晶に入射し表面から再放出される陽電子をビームとして取り出すことにより、径が小さく、しかもエネルギーおよび方向が良くそろったビームを得ることができる。製作した静電収束型低速陽電子実験装置は、低速陽電子発生部,ミラーアナライザー,陽電子高輝度化部分,ターゲット試料部分から成り、【10^(-10)】Torr台の真空度が得られた。低速陽電子発生部では、低速陽電子変換効率を【10^(-4)】以上に向上させることができた。エネルギー選別および放射線遮蔽のための90゜偏向ミラーアナライザーの製作を行い、殆んど損失なく目的のビームを偏向することができた。高輝度化のために、陽電子ビームの加速,絞り込み,再引出しの目的の静電レンズ系の設計計算を行い、それに基づいたレンズ部品の製作を行った。これらの成果の上に、昭和62年度には、高輝度ビームの実現および超低エネルギー陽電子回折の実験を試み、全体的な試作を完了の予定である。これとあわせて、固体表面と陽電子の相互作用のいくつかの基礎過程について理論的研究を行ない、陽電子の中性化(ポジトロニウム形成)による回折強度の損失について試算を行なった。
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[Publications] 谷川庄一郎: 放射線化学.
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[Publications] 谷川庄一郎: 日本結晶学会誌.
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[Publications] 石井晃: Physical Review B.
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[Publications] 石井晃: Surface Science.
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[Publications] 石井晃: Physical Review B.
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[Publications] 石井晃: Physical Review Letters.
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[Publications] 谷川庄一郎: "表面工学ハンドブック" 丸善,
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[Publications] 谷川庄一郎: "核物性" 丸善,