1986 Fiscal Year Annual Research Report
新しい鉄系形状記憶合金(Fe-Ni-Co-Ti系合金)の開発に関する研究
Project/Area Number |
61850131
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
田村 今男 京大, 工学部, 教授 (70025815)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
津崎 兼彰 京都大学, 工学部, 助手 (40179990)
梅本 実 京都大学, 工学部, 助手 (90111921)
牧 正志 京都大学, 工学部, 助教授 (10026247)
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Keywords | 形状記憶合金 / 形状記憶効果 / Fe-Ni-Co-Ti合金 / 熱弾性マルテンサイト / 薄い板状マルテンサイト / 鉄系マルテンサイト / オースエージ / γ´-【Ni_3】Ti |
Research Abstract |
種々の組成のFe-(29〜33%)Ni-(5〜15%)Co-(2〜5%)Ti合金およびこれらに微量のB(0.04%まで)またはAl(1.5%まで)を添加した合金を真空溶解により作製した。これらを種々の条件でオースエージ処理を施した後、硬さ測定,電気抵抗による変態点(Ms,As,Af点)測定,光顕および透過電顕による組織観察,曲げ変形による形状記憶率測定などを行った。得られた主な結果は次のとおりである。1.Fe-Ni-Co-Ti合金ではオースエージ処理によりオーステナイト(γ)中に微細なγ´-【Ni_3】Ti相が整合析出すると同時にγ粒界にη相(【Ni_3】Ti)が不連続析出する。このη相析出のため延性が低下するのが本形状記憶合金の材質上の大きな欠点であった。しかしBやAlを添加するとη相の析出が大きく抑制されることが明らかになった。その結果、BやAl添加が本合金系の延性改善のための有効な方策となり得る事が判明した。2.合金組成が変化すると、種々の大きさの熱ヒステリシスをもつ薄い板状マルテンサイトが生成することが明らかになった。例えばFe-33%Ni-10%Co-3.5%Ti-1.5%Al(973K,3.6〜7.2ks時効材)ではMs〓150K,As〓120K,Af〓200Kであり、いわゆる熱弾性マルテンサイトが得られるのに対し、Fe-31%Ni-10%Co-3%Ti(873K,3.6ks時効材)ではMs〓200K,As〓350K,Af〓500Kと熱ヒステリシスが大きい。しかし熱ヒステリシスの大小にかかわらずいずれの合金でも、Ms点直上もしくはMs点以下の温度で変形後Af点以上の温度に加熱すると完全な形状記憶効果を示すことが確認された。従来の形状記憶合金のすべては熱ヒステリシスの小さい熱弾性型マルテンサイトに由来していたが、本合金では合金組成およびオースエージ条件を適当に選択することにより、生成するマルテンサイトの熱ヒステリシスを広範に変化させることが可能であるという知見が得られ、広範な温度範囲での形状記憶効果の応用が可能であることが合った。
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