新しい鉄系形状記憶合金(FeーNiーCoーTi系合金)の開発に関する研究

1988 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 61850131
• Research Institution: Kyoto University
• Principal Investigator: 牧 正志 京都大学, 工学部, 教授 (10026247)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 津崎 兼彰 京都大学, 工学部, 助手 (40179990)
• Keywords: 形状記憶合金 / 形状記憶効果 / FeーNiーCoーTi合金 / 熱弾性マルテンサイト / 薄い板状マルテンサイト / 鉄系マルテンサイト / オースエージ / γ′ーNi_3Ti

Research Abstract

1.FeーNiーCoーTi合金は合金組成およびオースエージ条件を調整することにより、熱ヒステリシス(AfーMs)が大きく異なる(数10〜数100K)thin plateマルテンサイト(M)が生成する。Thin plate Mが生成すると、熱ヒステリシスの大小にかかわらずいずれの場合も完全な形状記憶効果が現れる。例えば、Feー33Niー10Coー4Ti合金(973K、18ks時効)はMs、Afが室温以下にある熱弾性Mとなり、液体窒素中で変形後室温までの加熱途中で完全に形状が回復する。一方、Feー31Niー10Coー3Ti合金(873K、3.6ks時効)はMs〓200K、As〓350K、Af〓500Kと熱ヒステリシスの大きいthin plate Mが生成する。この試料をMa近傍の温度で変形するとその後Af以上へ加熱すると完全に形状が回復する。さらに、一度液体窒素中に冷却しほとんどM組織にした試片を室温で変形を与え、その後Af以上に加熱すると85%という大きな形状回復を示した。このように本合金系はMの熱ヒステリシスの大きさを変化させることにより、低温から高温までの広範な温度範囲で形状記憶効果を示すという特徴を有する。
2.FeーNiーCoーTi合金に微量のBの添加またはTiの一部をAlで置換することにより、オースエージ後のオーステナイトの室温延性が改善される。これは、BおよびAl添加により延性低下の原因であるγ粒界上のζ相析出が抑制されるためである。
3.Ms、Afが室温以下にある熱弾性マルテンサイトに繰返し変態をおこさせると、Msはわずかに低下するが、Afは大きく上昇し熱ヒステリシスが大きくなる。その結果、室温でもMが一部残留するようになり形状回復率は100%から約60%と低下する。それゆえ、本合金系では繰返し熱サイクルによる形状記憶能の安定性は良くない。

Research Products

• [Publications] T.Maki: Proc.of Int.Conf.on Martensite Transformations(ICOMAT-86). 963-970 (1986)
• [Publications] T.Maki: Proc.of MRS Int. Meeting on Advanced Materials. (1988)
• [Publications] T.Maki: ISIJ International. 29. (1989)
• [Publications] T.Maki: Proc.of Int.Conf.on Martensitic Transformation(ICOMAT-89). (1989)
• [Publications] T.Maki: Proc.of Ist Japan Int.SAMPE Symposium and Exhibition. (1989)
• [Publications] 牧正志: "学術月報" 日本学術振興会, 1 (1988)