1987 Fiscal Year Annual Research Report
活性化オンコジーンを導入したトランスジェニックマウスによる個体発癌の研究
Project/Area Number |
62015082
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Research Institution | Tokai University |
Principal Investigator |
勝木 元也 東海大学, 医学部, 助教授 (20051732)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 穣 東海大学, 医学部, 助手 (10146706)
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Keywords | 個体発癌 / オンコジーン / ヒトcーHaーras / トランスジェニックマウス / 脾臓腫瘍 / 腺腫瘍 / 遺伝子導入 |
Research Abstract |
個体発癌におけるオンコジーンの機能を解析するために, ヒトcーHaーrasDNA(活性型およびプロト型)をマウス受精卵に導入した. 個体発生を経て得られたトランスジェニックマウスは, 活性型ヒトcーHaーras導入受精卵からは得られなかった. しかし, 2個の胚性腫瘍が得られたことから, 活性型ヒトcーHaーras遺伝子は, 胚発生の過程で発現し, その結果, 胚を腫瘍化するために, 正常な個体発生を完了することができずトランスジェニック胚は発生の途上で死亡したり, 腫瘍として検出されることが認められた. そこで, プロト型ヒトcーHaーras DNA導入トランスジェニックマウスを作成し, 活性型との比較を行なった. プロト型遺伝子導入マウスは11匹得られたが, 8匹は出産後2日以内に死亡した. 原因の多くは不明であったが, 1匹は顎下腺の腫大が認められ, 導入遺伝子の発現も認められた. 離乳に達した3匹のうち1匹は, 導入遺伝子が再配列を起し, 遺伝子の機能を失なっていた. 1匹は, 生後約4ヶ月後に腹内出血で突然死亡したが, 脾臓の腫瘍であった. その他腎臓の肥大も認められた. 脾臓腫瘍はヌードマウス生着せず, 悪性か否かは決定できなかった. このマウスは子孫を多く残し, その子孫のうちトランスジェニックマウスは成長がやや遅れる傾向が認められた. 腫瘍の発生は, 1匹のマウスで外耳に良性の腫瘍がみられた以外は, 発生が確認されたものはない. 残る1匹は, 左目の涙腺に腺腫瘍が認められた. 成長が著しく遅れたが, 成体に達してからは正常のマウスと変わらず, 多くの子孫を残した. そのうち雄のトランスジェニックマウスは成長が著しく遅れるため, 70〜80%は成育途上で死亡したが, 原因は不明であり, 腫瘍は認められていない. 以上のようなトランスジェニックマウスが得られたことから, これらを用いて個体発癌の過程を導入遺伝子の発現を通して解析する手懸りが得られたと考えられる.
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Research Products
(7 results)
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[Publications] 近藤寿人(Kondoh,H.): Dev.Biol.120. 177-185 (1987)
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[Publications] 大谷浩(Otani,H.): Develop.Growth & Differ.29. 373-380 (1987)
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[Publications] 勝木元也(Katsuki,M.): Japan Sci.Soc.269-276 (1987)
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[Publications] 垣生園子(Habu,S.): Eur.J.Immunol.17. 1467-1471 (1987)
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[Publications] 勝木元也: 生化学. 59. 265-278 (1987)
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[Publications] 勝木元也: 生体の科学. 38. 143-149 (1987)
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[Publications] 勝木元也編著: "発生工学実験マニュアルートランスジェニックマウスの作り方ー" 講談社サイエンティフィク, 219 (1987)