1987 Fiscal Year Final Research Report Summary
Project/Area Number |
62041103
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Research Category |
Grant-in-Aid for Overseas Scientific Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | Field Research |
Research Institution | Mejiro University College |
Principal Investigator |
スチュアート ヘンリ 目白学園女子短期大学, 一般教育, 助教授
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
IAN BADGLEY (カナダ)ケベック州アバタック文化研究所, 主任考古学者
山浦 清 立教大学, 文学部, 助教授 (50111589)
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Project Period (FY) |
1987
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Research Abstract |
東部極北圏(グリーンランド, バフィン島, ラブラドールと北極諸島)では先史エスキモー文化の起源はベーリンジア地方(シベリアの北東部からアラスカの北部にかけての地域)で発生したと考えられる極北小型石器文化に求められる. しかし, その文化がいつ, どのような経路で東部極北圏に拡散し, その東端に位置するグリーンランドにまで達したのかについては不明な点が多い. ヌネンガック遺跡は東部極北圏の北部と南部の折衝地点に立地しており, これらの経路を解明する上で格好の遺跡である. また, 約3000年前のインデペンデンス期から1920年代のラブラドール・イヌイット(エスキモー)期に至るまでの文化層を間断なく包含しているため, 小刻みの文化変容を把握することも可能である. 調査を実施するにあたり, 特に次の三項目に重点的に取り組む. (1)ヌネンガック遺跡における文化編年を確立し, それらが先史エスキモー文化の中でどう位置付けられるかを検討する. (2)歴史民族調査を通じて, 現在のラブラドール・イヌイット文化の成立過程と推移を究明する. (3)ヌネンガック遺跡の堆積物および出土遺構・遺物の変化に基づいて, 過去3000年間の環境条件と文化の関係を探る. 1987年度の調査は6月20日からヌネンガック遺跡と関連性が深く, ウンガバ湾の対岸に位置するクオックタック遺跡の調査を行った. この遺跡ではウンガバ半島のドーセット文化の出現と深く係わっているグロスウォータードセット期からドーセット文化中期にかけての遺跡と10基前後の竪穴住居址, 10数基のテントリングを確認して, その一部(200m^2)を発掘した. 遺跡周辺の分布調査と併せて判断するなら, ウンガバ半島北部が, これまでの学説に反して, いわゆる核地域からはずれた周縁地域ではなく, ハドソン海峡周辺の一中心地であった可能性が明らかにされつつある. 8月1日からはヌネンガック遺跡に移り, 約一月調査を実施した. カナダ側との協議の結果, 日本隊が3号住居址を, カナダ隊が1号住居址を発掘することになった. 出土遺物は石器, 骨角器, 木器など伝統的な品目と鉄器, 陶磁器などの交易品に分ける事ができる. 整理中の現段階では確実なことはいえないが, 3号址は接触期を中心として今から70〜80年前までの1910年代まで使用されていたものと思われる. 1988年の継続調査ではもう1基を住居址を調査するとともに住居址外にも発掘区を広げ, 遺跡の全容の究明に力を入れる予定である. キリネックとよばれるこの地方に住むイヌイットは, すでに18世紀から文献資料に登場している. 気象台の駐在員や宣教師などが書き残した断片的な資料を考古資料の解釈に応用して, この地域の文化復元をエスノアーケオロジカルな視点から試みてゆきたい.
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