Research Abstract |
本研究の目的は, 他国の類を見ないトンガ成人の"健康な肥満"の成立が小児期, 特に離乳期並びに思春期のイモ, 魚, ココナッツをキーフーズとする食事パターンと密接な関係にあるという仮説を設定し, その個人レベル並びに集団レベルの検証を行なうことである. 今回の予備調査では, 食環境の近代化が著しく急速にすすみ, 離島にまで及びはじめた近代化による影響を経時的に明かにするために首都地域コロフォウと離島地域ウイハの2地区について, 以下の概況調査を行なう. 合わせて, 次回予定の本調査の方法の確定を行なう 1)食習慣調査 2)健康度A(体格・生理)調査 3)健康度B(咬合の退化・う蝕等口腔の衛生状態)調査 4)食環境調査 トンガ王国離島ウイハ地区(以下U)と首都コロフォウ地区(以下K)の0才〜13才児計414名について, 主として計測, 観察, 保護者への面接調査を行ない, 以下の概況を把握した. (1)乳児死亡率は全国平均で8.8(1000人当たり)で日本の5.5には及ばないが発展途上国中群を抜いて低率であり, 全体として健康状態や衛生状態が優れていることを示している. しかし, 年次によって変動が多い(表1). (2)カウプ指数やローレル指数からみた体格は両地域共良く, 特にKでより高い. 一方, 健康上何らかの問題のある児がUで乳幼児30%前後, 小児40%前後, Kで乳幼児20ー30%, 小児14%前後を占める. 特にKでは心臓系疾患もいる(表2). (3)咬合, ディスクレパンシー, 齲蝕, 歯肉炎などからみた口腔の衛生状態は, いずれも日本などと比べると著しく良好である. Uに比べKで〓患率がより高い(表3). (4)いも, 魚, ココナッツなどトンガのユニークな健康を支えるキーフードの摂食者率は著しく低い. 朝食でいもを食べた小学生はUで56.3%, Kで15.3%にすぎない. これに対し, パンやコーヒー等外来の食品の摂食者率が高い. 特にKで著しい(表4, 5). (5)小児の家庭内での食事づくりへの参加も少ない(表6). 今後, 食生態, 健康度A, Bの相互関係を各々の指標を用いて地域の近代化の中で明らかにすること, その作業をふまえて, 本調査で用いるより簡単で, より有効な指標の選定とその具体的な使用方法について検討する予定である.
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