1987 Fiscal Year Final Research Report Summary
Project/Area Number |
62042020
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Research Category |
Grant-in-Aid for Overseas Scientific Research
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Allocation Type | Single-year Grants |
Section | Field Research |
Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
新田 栄治 鹿児島大学, 教養部, 助教授 (00117532)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
ポーンチャイ スチッタ シルパコン大学, 考古学部, 講師
シーサック ヴァリボート シルパコン大学, 考古学部, 助教授
横倉 雅幸 国士舘大学, イラク古代文化研究所, 嘱託研究員
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Project Period (FY) |
1987
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Research Abstract |
タイ東北地方, 特にムン・チ両川流域に分布する生産遺跡, とりわけ製塩・製鉄遺跡の発掘調査の実施により, 先史時代の農業いがいの生産基盤を解明し, あわせて先史時代商業活動における東北タイの塩と鉄の意義について, 考古学的に実証しようとする目的である. 製塩遺跡は主にムン上流域・チ流域のほか, 東北北部にも分布する. 遺跡では日常土器を転用した製塩土器破片・土器製作用アンビル・陶製支脚のほか, 大量の焼土・灰・炭化物が発見された. 東北タイの含塩土壌中の塩分を槽に入れ, 水で浸出した鹹水を煮沸することによって塩を得るという製塩法が紀元前後の先史時代に広く行われていたことが明らかとなった. 製鉄遺跡は主にムン川流域に分布する. 鉄滓・焼土・炭化物・土器・フイゴ羽口などが出土する. ドンプロン遺跡の調査から, 鉄鉱石を原料とし, 木炭を燃料とする小形円筒形炉による直接製錬であり, 多数の小規模施設による鉄の大量生産が行われていたと推定できた. 製鉄とあわせて粗鉄の製錬も同一遺跡で行われていた. 東北タイの製鉄開始時期は前3世紀ころまでさかのぼり, 12世紀以降には衰退する. 東北タイの製鉄が中国・インド等からの影響で成立したのか, 独自に成立したのかは未解明であるが, 当地産の鉄が東南アジア近隣地域に供給されていたと推定できる. 今回の調査により, 製塩業よりも, 製鉄業のほうが東北タイの経済的覇権のうえで大きや役割を果たしていたことがわかる. 生産遺跡の実態解明の端緒はつけることができたが, より明確にするには, 年代決定が決めてとなる. いまだ正確な土器編年ができていない東北タイでは, 基本的な編年の作成が急務である. 我々が発見した層位関係の明確な包含量をもつノンヤン遺跡の層位的発掘はムン川流域の編年の基礎になりうる. 今後は, ノンヤン遺跡の発掘によるムン川流域の土器編年の確立と, 東北タイの鉄を主とする鉱業の位置付けを考古学だけでなく, 歴史学・地質学を含めて解明することを目標としたい.
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Research Products
(1 results)