Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
D.L Kane アラスカ州立大学, 水資源研究所, 教授
G Wendler アラスカ州立大学, 地球物理研究所, 教授
W Harrison アラスカ州立大学, 地球物理研究所, 教授
C Benson アラスカ州立大学, 地球物理研究所, 教授
兒玉 裕二 北海道大学, 低温科学研究所, 助手 (70186708)
石川 信敬 北海道大学, 低温科学研究所, 助教授 (70002277)
小林 大二 北海道大学, 低温科学研究所, 教授 (30001655)
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Research Abstract |
アラスカ永久凍土地帯の融雪水(積雪より), 融氷水(氷河), 雨等の流出機構の特性を非凍土地帯の北海道のそれと対比し, 両地帯の洪水発生機構の差異を明らかにし, その予測を行なう. 1987の7月下旬から8月上旬にかけて, アラスカ州凍土地帯のGlenn Creek流域(1.8Km^2)において, 降雨の流出応答並びに, ツンドラ帯の熱収支・蒸発量の観測を行った. 流域の6割はBlack Spruceの永久凍土地帯, 3割はBirchとWhite Spruceの季節凍土地帯である. 活動層の厚さは, 7月下旬において20cmから60cmで, 林床は10〜20cm厚のMOSSで被われている. 観測結果の概略は次のようであった. 流出の応答は, 非凍土地帯の北海道に比して, 非常に遅く, ピーク流出は, 降雨のピーク時より約20時間(北海道では1〜6時間)もの遅れを示した. 流出水の水質の変動の応答は, 流量のそれより上流で, 12時間, 下流では, 24時間の遅れを示した. 川の水温は, 降雨による増水時には, 上流で3.6℃まで下った. これ等のデータにより, 凍土地帯の森林における流出特性は, 次のように推察される. 林床のMOSSの保水性が高いために, 流出応答が極度に遅い. 降雨流出生起時にはMOSSを通しての表層流出が約半分を占め, 残りは, 浅い地中流出となる. 地中流出が, MOSS流にやや先行する. 観測期間中, 気温(1.5m)は3.2〜27,8℃, 植生地表面温度は-0.4〜32.0℃, 水深の浅いたまり水の温度は9.1〜22.5℃と大きく変化し, 一方流水(川)の温度は3.6〜10.0℃であった. 蒸発量はたまり水面では直接測定から, その他の面では熱収支法によって算出したが, 植生面やたまり水からは蒸発が, 流水面では凝結と全く異なる現象が生じていた. たまり水面の日平均蒸発量は0.8〜1.2mm(全期間13mm)であり植生面からはさらに大きな値を得た. 期間中の総雨量は25mmであったが, その約50%は蒸発したことになるが, 永久凍土地帯の流域水収支を考える上で蒸発による水損失の重要性が指摘される. 63年度において, 融雪流出期の流出応答,熱収支・水収支等の研究を行う予定である.
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