Research Abstract |
中国古典文学史上の代表的かつ後世への影響力の大きい文人として, 今回屈原・陶淵明・杜甫の三人を取り出し, 彼等の「人間観・世界観」を探求し, それがいかなる点において中国独自の固有性を有し, あるいは汎世界的な普遍性を有するのか. さらにそれが後世いかなる形で評価され, また現介的価値を有するものと認められるのか, 等を研究することを目的とする. なお日中の最新の学術成果を踏まえ, 相互の国で共同研究を積み重ね, 国際的視点を持った理解の得られることを目標とする. (1)まず加藤が共同研究の基本資料として, 「日中比較文学研究資料」「日本における陶淵明の受容と展開」「日本における杜詩の受容と展開」を, 編集し, 遼寧師範大学にて, 従来の日本における中国古典文学の受容史とその研究成果の概要を説明. 遼師大側も同様に屈原・陶淵明・杜甫に関する豊富な資料を提供し説明した. その後, 共同討議を重ね, 研究の方向や方法を検討し合った. (2)中国の調査旅行では, 北京大・陳貽〓教授, 北京師大・〓英魁教授, 南京大・程千帆教授,南京師大・金啓華教授等, 〓旦大・王運熈教授等を訪問, 最新の研究成果を収集, また研究動向を把握することができた. さらに北京大図書館・上海図書館にて資料の調査を行ったが, 事前の連絡が悪く, 収集はうまく進まなかった. (3)さらに書簡にて, 現在杜甫研究の分野において,最も重要な仕事をしている山東大学・張忠剛副教授(杜甫全集校注の研究), 江蘇社会科学院・許総研究員(杜甫研究史の展開)に連絡をとり, 貴重な文献を提供して頂き, これらをベースに, より創見に富む研究を推進することを確認した. (4)曲維氏は, 夏目漱石・芥川龍之介における漢文を, 中国とはまた異質の「和製漢文」と認める一方で, 中国文化の普遍性が近代日本文学と深く関わった点を強調した. (5)日本を訪問した李世剛・盧文暉両氏は, 京都大人文研・大阪大・天理大の各図書館にて, 善本漢籍を調査・収集,その知見をもとに愛媛大学にて, 唐詩より見た日中の文学交流・影響関係について学術講演を行い, 中国古典文学の特質を説明, また日本漢文への強い関心を示された. (6)〓信の研究を一層進めるため, 一字索引を作成するとともに, 今後の研究対象として内閣文庫蔵李摯のマイクロフィルムを入手した. (7)以上をもとに, 封建時代下の歴代の中国知識人がいかに社会的正義を追求し, また自然との調和のある社会の実現に邁進したかについて, 新しい成果を得つつある.
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