Research Abstract |
本研究は近くで遠い国である韓国の実態を知る手段として, 韓国の食文化について検討しこの食文化がどのような影響を日本に与えたかを知ることにより, 両国の関係についての認識を深め, この認識を通して日韓親善の一助としたい. 韓国食文化の日本への影響は, 5〜7世紀, 韓国人が陸続と半島から日本へ渡ってきた集団渡来の時期と, 豊臣秀吉の文禄, 慶長の役における陶工の連行時が主たるものと考えられる. その後, 朝鮮通信使の往来があったが, この影響はさほど大であったとは考えにくい. なお, 第二次世界大戦後の焼肉, キムチブームは, 第3次韓国食文化の日本への影響といえよう. これは日本人が各国の食事を区別することなく食べるようになった習慣や, 韓国産業の驚異的発展に負うところが多いと思われる. 研究者らはまず, 行事食の調査を行った結果, "秋夕"及び"正月"の祭祀〓は, 李朝時代に規定された朱子家礼の「四家便覧」に則っており, 秋夕に松餅, 正月に餅湯を供える. これは韓国女性が手間をかけて調理することを大きなよろこびとするところと感じられる. そこには, 韓国人独自の陸海空すべてを代表する食物を食することが生命の基であり, それを供することを孝とする宇宙一体観が表われており, この, 儒教的形式の中に韓国固有の伝統食の思想と原型を把握することができた. また, 韓国食文化の著しい特徴は, 肉食である. 仏教により一時制限されたが, モンゴルにより復活した. 動物の身体の全ての部分を食べる各種の料理法の発達と生食がみられる. 重湯(湯煎)などの穏やかな長時間加熱は調理器具の大型化となり, 合理的暖房温突へつながったと思われる. 次に現代韓国人の日常食について, 三世代家族と核家族間につき比較した. その結果, 両者間に特に大きな差は認められなかったが, 三世代家族は, 核家族より伝統色の濃い食事をとっているといえた. また使用食器具について, 韓国と日本の男女中学生を対象として調査を行った結果, 家族が決った食器具を使用している割合は, 日本では箸, 飯, 汁椀が多く, 韓国では〓が多かった. 箸はともに90%以上が使用し, 箸の持ち方が難しいと感じている者は, 韓国には少なかった. 副食は, 日本では半数以上の家庭で個人別であるが, 韓国では大皿盛りであった. 今後は上記結果を踏まえてさらに調査をすすめ, 韓国食文化の日本への影響を考察する資料を収集する予定である.
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