1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62065001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 丞平 京都大学, 文学部, 助教授 (20144313)
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Keywords | 落款印章 / 技法分析 / 日本絵画史研究方法 |
Research Abstract |
長い日本の歴史の中で育まれて来た美術作品は、世界でも最高レベルのものであるが、それだけに歴史的にも古く、日本文化を反映した貴重な作品群に対して、従来の日本美術史研究では未だ充分な研究と解明がなされていない。その原因としては、一つには現存する作品が少なく、更にその作品の中に模写や偽物が混入し、玉石混交の状態になっていることがあげられる。又、もう一つの問題としては、そのような真偽が判明していない作品群に対して、美術史研究の方法が、研究者個人個人の長年の勘と感覚に頼らざるを得ないのが現状であった点がある。このような資料の欠落、合理的判断方法の未確立から、日本美術史研究は学術としての発展が遅れ、研究が不正確なものとなってきていた。 本研究計画では、現存しない作品についても、その写真及び資料を収集整備し、真偽判定を最新の機器を使用した落款印章照合研究と、新しく導入した技法分析研究を通して、客観的、合理的、かつ正確に行えるようにした。こうして得た正しい資料を元に、背景となる時代と作品構成との関連も、多量の古文書の解読を通して研究を進めている。本年度の成果の内、数々の新発見作品の研究と共に、大きな成果が上ったのが、江戸時代における本草学、物産学、博物学等の諸学問の興隆と、それに伴う外国からの文物の輸入、中でもオランダや中国の図版と、日本における写生画の発達との関係である。又、こうした作品制作の背景となる時代性、社会現象、あるいは思想、文化との影響関係については、その成果の一部を「江戸時代における中国絵画思想の受容と展開-狩野派、土佐派そして円山応挙」(『京都大学美学美術史学研究室紀要』第10号)「与謝蕪村の山水人物図」(『国華』1119号)「日本絵画における写実と空間の問題」(『哲学研究』第555号-8月刊行予定)にまとめた。
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Research Products
(3 results)
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[Publications] 佐々木丞平: 京都大学美学美術史学研究室紀要. 10号. 1-33 (1989)
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[Publications] 佐々木丞平: 国華. 1119号. 20-31 (1988)
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[Publications] 佐々木丞平: 哲学研究. 555号. (1989)