1989 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62065001
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
佐々木 丞平 京都大学, 文学部, 助教授 (20144313)
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Keywords | 落款印章 / 技法分析 / 日本絵画史研究方法 |
Research Abstract |
従来の美術史研究では現存する作品の量が少なく、良質の資料が得られないことから十分な成果を得られずにいたが、本研究は、入札目録掲載資料を収集し、1.作品資料、文献資料の収集、整備 2.落款印章分析照合研究による真偽判定と制作年代判定 3.技法分析研究 4.時代性、地域的文化形体等、背景となる要因の研究 5.画家の絵画思想の解明、という五本の柱を立て、総合的に研究を進めてきた。従来の一視点からだけの研究では解明できなかった部分も、このように五本の柱を立て、それぞれの観点から同時に特定の問題に対してアプローチを進め、総合的に検討、研究を重ねることによって初めて不明確であった問題点もその全体像を浮き彫りにすることが出来るようになった。又、研究の大前提となる、研究に使用する作品資料の真偽判定、時代判定は、研究精度を高める上に重要な部分を占めるので、落款印章分析照合研究には特に力を入れ、白黒画面で細部の読み取りに時間を要した照合も、スーパープロセス装置(TA3103型)を導入し、色変換による分析読み取りによって精度を上げることが出来た。研究に使用する作品が正しいものでないことには研究そのものが進まないため、この落款印章分析照合研究の成果は日本美術史研究の基盤ともなるべき重要なものであり、平成2年5月の学会で発表予定である。こうした分析結果もコンピュータグラフィックカメラ(ARTIST 2)によりフィルム化することによって多くの研究者が確認研究することが可能となった。技法分析研究も各流派間の影響関係等に確実な成果を上げており、複数の映像を同時に比較研究する必要性からタイムベースコレクターを導入し、研究が迅速且つ精度を上げて行えるようになった。又、上記の新たな研究方法によるモデルケースとして「円山応挙研究」を完成した。この論文は平成2年度末までには出版の予定である。
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