1989 Fiscal Year Annual Research Report
シグナル伝達に関与するGTP結合タンパク質の構造と機能
Project/Area Number |
62065008
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
上代 淑人 東京大学, 医科学研究所, 教授 (90012690)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小笹 徹 東京大学, 医科学研究所, 助手 (70202059)
中福 雅人 東京大学, 医科学研究所, 助手 (80202216)
菅野 純子 東京大学, 医科学研究所, 助手 (80192756)
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Keywords | シグナル伝達 / GTP結合タンパク質 / Gタンパク質 / rasタンパク質 |
Research Abstract |
1.哺乳動物Gタンパク質の構造と機能については、昨年度に引続き、ヒトGoα及びGxα遺伝子の構造決定を行なった。Goα遺伝子のエキソン・イントロンの構造は、Giα遺伝子群のそれと同様で8個のエキソンを含んでいたが、Gxα遺伝子は2個のエキソンから構成されていた。現在、各Gαタンパク質の機能を解析するために、大腸菌でのリコンビナントGαタンパク質発現系の確立、各Gαタンパク質に対する抗体の調製等を行っている。2.哺乳動物Gタンパク質遺伝子の発現調節機構については、主にGi1α遺伝子について解析を行っている。今回、新たにラットGi1α遺伝子のプロモーター領域を単離しその構造を決定した。Gi1α遺伝子のプロモーター領域の中には、ヒトとラットの間でよく保存された領域が数個存在している事が明らかになった。ヒト及びラットGi1α遺伝子の発現に重要な領域をCATアッセイを用いて決定した。 3.ras遺伝子の機能については、rasタンパク質を過剰生産しているマウスSwiss3T3細胞株を用い、PDGF刺激により、GTP結合型のrasタンパク質が増加することを明らかにした。このことは、この細胞では、rasタンパク質がPDGFを介するシグナル伝達系に関与していることを示している。今後、上記のような系を用いてrasタンパク質の機能を更に詳しく検討することを計画している。4.サッカロミセス酵母のRAS/cAMP系路による細胞増殖制御の解析を行ない、IRA1,IRA2と呼ばれる遺伝子の産物の機能が、哺乳動物においてrasタンパク質のGTPase活性を促進する因子として同定されたGAPと相同であり、哺乳動物GAPの発現によりその機能が代償しうることを明らかにした。この結果は、rasが関与するシグナル伝達系におけるGAPの機能を考える上で極めて重要な知見である。
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[Publications] 小笹徹: "Gタンパク質を介した細胞膜情報伝達機構" 病態生理. 8. 613-623 (1989)
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[Publications] 小笹徹: "Gタンパク質の構造と機能" 日本臨床. 47. 2346-2352 (1989)
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[Publications] Asano,T.: "Identification of lung major GTP-binding protein as Gi2 and its distribution in various rat tissues determined by immunoassay" Biochemistry. 28. 4749-4754 (1989)
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[Publications] Morishita,R.: "Purification and identification of two pertussis-toxin-sensitive GTP-binding proteins of bovine spleen" Biochem.Biophys.Res.Commun.161. 1280-1285 (1989)
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[Publications] 佐藤孝哉: "神経分化とILー6" 実験医学. 7. 44-49 (1989)
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[Publications] 佐藤孝哉: "神経細胞の分化とサイトカイン" Medical Immunology. 18. 256-258 (1989)
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[Publications] 佐藤孝哉: "GTP結合タンパク質と細胞癌化" 生体の科学. 41. (1990)
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[Publications] Ruggieri,R.: "MSI1,a negative regulator of the RAS-cAMP pathway in Saccharomyces cerevisiae" Proc.Natl.Acad.Sci.USA. 86. 8778-8782 (1989)
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[Publications] Tanaka,K.: "Saccharomyces cerevisiae genes,IRA1 and IRA2,encode proteins which may be functionally equivalent to mammalian ras GTPase activating protein(GAP)" Cell. (1990)
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[Publications] 伊藤広,上代淑人: "シリーズ 分子生物学の進歩7 日本分子生物学会編 細胞増殖・細胞運動 第4章シグナル伝達に関するGTP結合タンパク質" 丸善, 47-72 (1989)
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[Publications] 佐藤孝哉,上代淑人: "シリーズ 分子生物学の進歩12 日本分子生物学会編 細胞癌化の分子機構 第5章シグナル伝達における癌遺伝子産物の機能" 丸善, 93-122 (1989)
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[Publications] 佐藤孝哉,上代淑人: "新生化学実験構座8 細胞内情報と細胞応答 6.3マイクロインジェクション" 東京化学同人, (1990)
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[Publications] 松本邦弘,中福雅人: "新生化学実験講座8 細胞内情報と細胞応答 14.酵母における情報伝達系" 東京化学同人, (1990)