1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62212005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
池畑 誠一郎 東京大学, 理学部, 助教授 (30107685)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小森 文夫 東京大学, 理学部, 助手 (60170388)
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Keywords | ポリアセチレン / ソリトン / Peierls歪み / 中間子 / 格子上不純物 |
Research Abstract |
Peierls歪みを持つ一次元格子が, 格子上に置かれた不純物に対して安定であるかどうかは実験的, 理論的に未知の問題である. Peierls歪みを持つトランス型ポリアセチレンの格子が格子と上不純物に対して安定であるかどうかは, 大変意味深いが格子上不純物を化学的に安定に作る事が困難で未だ調べられていない. 現在のところこの種の不純物の効果を調べる事ができる唯一の方法はμ^-を用いる事である. ポリアセチレンにμ^-を照射すると格子上のCとμ^--e複合核を作りこれはB(アクセプター)に相当する格子上不純物として働く. この不純物の効果はμ^-Soin Resenance(μ^-SR)を通して調べる事ができる. μ^-SRは高エネルギー物理学研究所内東京大学中間子科学実験施設に於いて行った. 共鳴周波数は約500MHzで測定温度域は室温から約100Kまでである. その結果, μ^-の共鳴位置は自由なμ^-の位置に比べ240K以上の高温域では約150ppm低磁場側にシフトし, 200K以下の低温域ではシフトが消失しほぼ自由なμ^-の共鳴位置にある事が観測された. このようなシフトの大きさ並びに温度依存性を通常の化学シフトで説明する事は困難である. 他の可能性としては, Peierls歪みの安定性に関するものである. μ^--C複合核はポリアセチレンの鎖の長さから考えると一つの鎖に対して1%程度依存しているものと思われる. この様な格子上不純物に対して高温域ではPeierls歪みが不安定となり一次元金属状態が生じ, 低温域では再びPeierls歪みが安定化したと考えれば, 本実験で観測されたシフトの大きさと温度依存性を定性的には説明し得るものと考えられる. 今回得られた結果は, 一次元Peierls歪みを持つ格子は格子上不純物に対して不安定である事を示唆しており応用面でも重要である. ポリアセチレンで観測されている中性ソリトン, 荷電ソリトンは, Peierls歪みがその存在の基礎となっており, それらの格子上不純物に対する安定性も今後の興味深い研究課題である.
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Research Products
(1 results)