1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62213003
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
安積 徹 東北大学, 理学部, 教授 (90013490)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
寺嶋 正秀 東北大学, 理学部, 助手 (00188674)
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Keywords | モリブデン / 六核錯体 / クラスター / スピン副準位 / 金属錯体 / 無輻射遷移 |
Research Abstract |
遷移金属錯体の無輻射遷移を理解するためには, 比較的低エネルギーの励起状態がいくつかのスピン副準位より構成されているということを積極的に考慮に入れる必要がある. しかし, そのような観点からの研究は今まで全くなされていない. 本研究ではまず手はじめとして, モリブデンの六核錯体〔Mo_6Cl_<14>〕^<2->という錯体の励起状態について考察した. この錯体は, 光照射により赤色の発光を示すが, どのような励起状態が関与しているか全然解明されていない. ましてや, スピン副準位までたちいった研究はありようもなく, 興味ある二三の実験も解釈される兆しもなかった. そこで本研究では, 新しい理論的考察および燐光寿命の温度変化の実験から, 発光に関与するスピン副準位の役割りを明らかにすることを試みた. 理論の骨子は次のように要約される. (1)M_aのd軌道を用いて分子軌道を作る. (2)励起状態について, 電子間反発を入れたエネルギーを計算する. (3)更に, 一次および二次のスピン軌道相互作用を計算し, スピン副準位の順序および間隔を求める. 以上の理論的取り扱いにより次の結論を得た. (1)最低励起三重項状態の空間部分は^3T_<1u>であり, これは更に4つのスピン副準位に分散する. (2)そのスピン副準位はエネルギーの低い方から順に, T_<2u>, Eu, T_<1u>, A_<1u>である. (3)下から3番目の副準位T_<1u>がもっとも発光能が大きい. (4)このT_<1u>状態と最低副準位T_<2u>とのエネルギー間隔は, モリブデンのd軌道についてのスピン軌道相互作用因子Sdで与えられる. 寿命の温度変化の解析より, 各副準位の寿命, およびエネルギーを求めることができた. また, モリブデンのスピン軌道相互作用因子Sdは613cm^<-1>と求まった.
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Research Products
(1 results)