1987 Fiscal Year Annual Research Report
光応答性ポリペプチドドメインを有する高分子膜の合成と応用
Project/Area Number |
62213009
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
井上 祥平 東京大学, 工学部, 教授 (20010762)
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Keywords | ポリペプチド / グラフト共重合体 / 光応答性膜 / コンホメーション / 円偏光二色性 / ミクロドメイン構造 / アゾベンゼン / アスパルテート |
Research Abstract |
高分子のもつ著しい特徴の一つであるその多様なコンホメーションを光によって制御しようとする試みが盛んに行われている. しかし, これらの研究の成果が, 膜を始めとした機能材料に応用された例はほとんどない. これは, 膜のような固体状態では, 光による効率的な構造変化が困難であるためと考えられる. 筆者らは最近, 固体膜においても溶液中と同様のコンホメーション変化が期待できる新しい膜形態を提案した. この概念は, グラフト共重合体がつくるミクロドメイン構造に基づいている. 本研究では, 有機溶媒中で光誘起コンホメーション変化を起こすことが知られているアゾベンゼン修飾ポリペプチドを, 安定なビニルポリマー膜中に集合体ドメインとして導入し, 光照射によるポリペプチド鎖のコンホメーション変化を調べた. ポリ(2-ヒドロキシエチルメタクリレート)を幹, P-フェニルアゾベンジルL-アスパルテートを主成分とするコポリペプチドを枝, としたグラフト共重合体を, 筆者ら独自の方法により合成した. これをキャスト製膜した後, 1.2-ジタロロエタン中に浸漬したまま, 紫外および円偏光二色性スペクトルを測定した. 膜は黄色透明であり, 同溶媒中でも安定であった. 膜に紫外光を照射すると, ポリペプチド側鎖のアゾベンゼン基がトランスからシスへと異性化することが確かめられた. まだこれに伴なって円偏光二色性スペクトルの223nmに現れていた左巻きα-ヘリックス構造に由来する正のピークが, はじめの66%に減少することがわかった. これらの変化は完全に可逆的であり, 可視光を照射することにより, もとのスペクトルを得ることができた. このように, 膜の形においても可逆的なポリペプチドの光誘起コンホメーション変化が可能であることがわかった.
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