1987 Fiscal Year Annual Research Report
有機金属化合物を用いた活性表面の設計と触媒作用に関する研究
Project/Area Number |
62215005
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
岩澤 康裕 東京大学, 理学部, 教授 (40018015)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
朝倉 清高 東京大学, 理学部, 助手 (60175164)
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Keywords | ニオブ触媒 / 触媒設計 / 固定化触媒 / エタノール / 脱水素反応 / 反応機構 / EXAFS / ニオブπアリル錯体 |
Research Abstract |
本研究者らはこれまで, Mo, Cr, Fe, Co, Ru, Rhなどの有機錯体を用いて一定の構造を持つ金属サイトをシリカやアルミナ表面に設計し, その触媒機能と触媒作用機構を明らかにしてきた. これらの研究を通じて(1)従来困難であった触媒表面の分子設計が有機金属化合物を利用することにより可能なこと, (2)均一系とは異なった機能と物性が作れること, (3)固体触媒の触媒作用の研究に大きな障壁となっていた表面状態の複雑さと不明確さなどの問題を解決する方法となり得ること, を見いだしてきた. 61年度の本特定研究のもとでの研究により, Nbのπアリル錯体を用いてシリカやチタニア表面に新しいNbモノマー構造を作ることに成功した. モノマー構造を持つ初めての固体Nb触媒であり, 高い脱水素活性を示すことも従来の固体Nb触媒には見られない特質である. 本研究では, 選択的に進行するエタノールの脱水素反応の機構を研究し, 新しいタイプの反応分子間の共同触媒作用機構を見いだし, 自己幇助型脱水素反応機構と名づけた. すなわち, まずエタノールはNbモノマー上で解離吸着し, エトキシル基と水酸基となるが, 気相にエタノールが存在しない場合には673Kではじめてエチレンと水とに分解される. ところが気相のエタノールがさらに1分子吸着すると, エトキシル基が活性化され, 400Kでさえ脱水素が起こりアセトアルデヒドと水素が等量生成される. 第一に吸着するエタノールから生成するエトキシル基はそれ自体はα位のC-H結合で切断が起こりエチレンに転換されるが, そこに第二のエタノール分子が吸着するとβ位でC-H結合の切断が起こるようになる. しかも遥かに低い反応温度で脱水素生成物であるアセトアルデヒドが生成する. これは対称性の変化というよりもむしろ電子的供与効果と関連づけれら, Nbの4d軌道を通してエトキシル基のβ水素が活性化されている. この機構は触媒作用のひとつの概念を提供する.
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[Publications] M.Nishimura: Chemistry Letters. NO.4. 573-576 (1987)
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[Publications] M.Nishimura: Proceeding of 9th International Congress on Catalysis,in press. (1988)
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[Publications] Y.Iwasawa: Advances in Catalysis. 35. 187-264 (1987)