1987 Fiscal Year Annual Research Report
有機金属錯体からの還元的脱離とβ-脱離における選択性
Project/Area Number |
62215006
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Research Institution | Tokyo University of Agriculture and Technology |
Principal Investigator |
小宮 三四郎 東京農工大学, 工学部, 助教授 (00111667)
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Keywords | β-脱離反応 / 有機遷移金属錯体 / 白金 / 5配位中間体 / 立体化学 |
Research Abstract |
これまで, 一連の有機金(III)化合物や有機ニッケル(II)化合物を単離し, その熱分解反応を詳細に検討し, 炭素-炭素結合生成を伴う還元的脱離反応における支配因子について検討してきた. ここでは有機遷移金属錯対の熱分解反応におけるもう一つの低エネルギー経路としてのβ-脱離反応について検討した. 従来β-水素脱離反応については比較的よく検討されてきたが, 水素以外のβ-位の置換基の脱離反応についてはあまり検討されきいない. ベンゼン中, デトラキス(トリフェニルホスフィン)白金(II)とβ-ブロモフェネトールの反応を行ったところ, 酸化的付加反応が起き, β-行にフェノキシ基を持つ新しい有機白金錯体, (β-フェノキシエチル)(ブロモ)ビス(トリフェニルホスフィン)白金(II)を単離することができた. この錯体は赤外およびNMRスペクトル, 元素分析, 単結晶X線-構造解析および化学反応性から同定した. この錯体の熱分解反応を行うと, エチレンおよびビニルフェニルエーテルが生成し, β-位の水素のみならず, フェノキシ基も競争的に脱離することが分かった. このフェノキシ基の脱離反応によるエチレンの生成を動力学的に検討した結果, 三級ホスフィン, 無水マレイン酸等のπ酸, BF3・Et20等のルイス酸等を系に添加するこによりフェノキシ基の脱離反応は著しく加速されることが分り, 5配位中間体を通り反応が進むのではないかと推定した. このようなβ-位の置換基の脱離反応の立体化学を明らかにするため, β-位に置換基を持つ, スレオおよびエリスロのsec-ブチル白金(II)錯体からのβ-脱離生成物を検討したところ, アセトキシ基やヒドロキシ基の脱離反応は本来シス脱離であると考えられた. しかしブロモ基の場合には逆にトランス脱離であった. また, ニッケルやパラジウム錯体でも同様であった.
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[Publications] Sanshiro KOMIYA: J.Organomet.Chem.328. C40-42 (1987)
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[Publications] Sanshiro KOMIYA: Chem.Lett.1287-1290 (1987)
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[Publications] Sanshiro KOMIYA: Bull.Chem.Soc.Jpn.60. 3423-3424 (1987)
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[Publications] Sanshiro KOMIYA: Chem.Lett.63-66 (1987)
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[Publications] Sanshiro KOMIYA: Chem.Lett.367-371 (1987)