1987 Fiscal Year Annual Research Report
酵素反応におけるビタミンB_<12>補酵素の炭素-コバルト結合活性化の機構
Project/Area Number |
62215018
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
虎谷 哲夫 京都大学, 教養部, 助教授 (70026318)
|
Keywords | ビタミンB_<12>補酵素 / アデノシルコバラミン / B_<12>依存酵素 / ジオールデヒドラーゼ / 酵素-補酵素相互作用 / 炭素-コバルト結合の活性化 / リボース |
Research Abstract |
本年度は, ローリボース部分の役割を昨年度に引続いて更に詳細に検討した. またB_<12>部分でのアポ酵素との相互作用が炭素-コバルト(C-Co)結合の活性化において果たす役割についても研究し, 以下の成果を得た. 1.補酵素機能発現及びC-Co結合活性化におけるローリボース部のβ-ローリボフラノース環と官能基の役割 合成したリボース部修飾アナログのうち, 2′-デオキシ体と3′デオキシ体は補酵素活性を一部保持していたが, 天然補酵素と同じ官能基をもちリボース部の2′と3′位の間で切断されている2′, 3′-セコ体及びその2′, 3′-ジアルデヒド体は, 酵素に結合するにもかかわらず全く補酵素活性を示さなかった. 従って, 補酵素機能発現におけるリボース各部の重要性はβ-ローリボフラノース環>>3′-OH>2′-OH>-O-の順であり, リボース部の重要性はその官能基によりもむしろ5員環の硬い構造にあることが明らかとなった. 補酵素として活性な前2者のアナログのC-Co結合は酵素反応中にホモリシスしたが, 不活性な2′, 3′-セコ体のそれはアポ酵素による活性化を受けないことを示した. 一方その2′, 3′-ジアルデヒド体は不活性であるにもかかわらず, アポ酵素に結合するとC-Co結合が活性化され, ゆっくりとホモリシスすることを見出した. 2.B_<12>部分でのアポ酵素との相互作用によるC-Co結合不安定化の実証 立体的にかさ高な上方配位子をもついくつかの不安定なアルチキB_<12>を合成し, 遊離の状態と酵素に結合させたときのC-Co結合の開裂速度を比較した結果, ネオペンチル, イソブチル, シクロヘキシルの各B_<12>はアポ酵素の共存によりC-Co結合の開裂が著しく加速されることを見出した. これはB_<12>部分がアポたんぱくに結合するだけで, 上方配位子での特異的な相互作用がなくてもC-Co結合が一定の不安定化を受けることを初めて実証したものである. 酵素の反応におけるその役割を考察した.
|
-
[Publications] 虎谷哲夫: The Journal of Biological Chemistry. 261. 9289-9293 (1986)
-
[Publications] 虎谷哲夫: The Journal of Biological Chemistry. 262. 8544-8550 (1987)
-
[Publications] 市川雅一: Biochimica et Biophysica Acts. 952. 191-200 (1988)
-
[Publications] 虎谷哲夫: Biochemistry.
-
[Publications] 森井 孝: アメリカ化学会誌. 109. 938-939 (1987)
-
[Publications] 桑原 淳: アメリカ科学アカデミー紀要. 85. (1988)