1987 Fiscal Year Annual Research Report
酵素類似機能発現のための反応場の設計(金属錯体による糖質の分子識別と変換)
Project/Area Number |
62216005
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
矢野 重信 東京大学, 工学部, 講師 (60011186)
|
Keywords | 金属錯体 / 配糖錯体 / 糖質の変換 / EXAFS / X線結晶構造解析 / 酸素モデル |
Research Abstract |
1.糖質変換反応および糖質の分子識別機能を有する金属錯体の探索-N-置換ジアミンとの組み合わせの系では従来のNi^<2+>の他にCo^<2+>, Sr^<2+>, Pr^<3+>がC2エピ化に対し有効であることが判明した. またアルカリ土類元素の中でCa^<2+>がケトースへの異性化を伴いながらも高い反応性を示すことが明らかとなった. さらにCa^<2+>の場合には簡単なモノアミンでもエピ化が速やかに進行することが見いだされた. 2.N-置換ジアミンーNi(III)錯体によるアルドースのエピ化反応機構の解明-エピ化反応をC1位の炭素が^<13>Cで同位体標識されたD-Glcを用い^<13>CNMRにより検討した. その結果, 立体特異的炭素骨格転位を伴う極めて珍しいC2エピ化が進行していることが明らかとなった. さらにFXAFS法により, 反応活性線は単核錯体であることが判明した. 以上の知見を基に, エピ化反応の機構を提案した. 3.モノアミンーCa^<2+>系によるアルドースの変換反応機構の解明-CaD1^<2+>-トリエチルアミン系による反応を, 〔1-^<13>C〕-D-Glcを用いD1^<13>CNMRにより検討した. その結果, 立体特異的炭素骨格転位を伴うC2エピ化と同時に転位を伴わないケトースへの異性化も進行していることが明らかとなり, それらの反応機構を提案した. 4.酵素類似機能を有する反応場の設計-tren{tris(2-aminoethyl)amine}とNi^<2+>とD-Manとの反応により糖残基を2個含んだ錯体{〔Ni(D-Man_2-tren)〕Cl_2・CH_3OH}が得られた. X線結晶構造解析を行ったところ, trenに二つのD-ManがN-グリコシドで連結し, tren由来のN原子と各糖部分のC2のO原子とでNiに六座配位していることが判明した. また, 本錯体中で二つのD-Man部が互いに接近し, 水素結合によるネットワークが形成された特異な構造を持っていることが明らかにされた. この事実は, 金属錯体上に糖質を集積させることにより, 酵素類似機能を発現する可能性のある新規反応場の分子設計の手掛かりとして重要な知見と考えている.
|
Research Products
(4 results)
-
[Publications] 棚瀬 知明: J.Chem.Soc,Chem.Commun.659-661 (1987)
-
[Publications] 棚瀬 知明: Chem.Lett.1409-1412 (1987)
-
[Publications] 矢野 重信: Chem.Lett.2153-2156 (1987)
-
[Publications] 棚瀬 知明: Inorg.Chem.