1987 Fiscal Year Annual Research Report
サルモネラ鞭毛における異種蛋白質の分子集合による構造形成過程の研究
Project/Area Number |
62220010
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
沓掛 和弘 東京大学, 理学部, 助手 (90143362)
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Keywords | サルモネラ / 細菌鞭毛 / 構造形成 / 分子集合 / 遺伝子クローニング / 塩基配列 / 膜蛋白質 |
Research Abstract |
サルモネラの鞭毛は, 基体・フック・繊維の3つの部分構造からなる運動器官であり, 20種類以上の蛋白質が分子集合して形成される細胞表層膜系の高次構造体である. この構造形成には30個以上の遺伝子の機能が必須であるが, これらの産物の機能としては, (1)鞭毛遺伝子の発現制御因子(2)鞭毛構造構成素材蛋白質(3)素材蛋白質の分子集合による構造形成過程の調節因子 の3つが考えられる. (1)と(2)については解析が進められているが(3)についてはまだ不明な点が多い. 基体形成の後期過程であるPリング形成には, flaFIとflaFIXの2つの遺伝子が関与している. 後者はPリングの素材蛋白質の構造遺伝子であるので, 前者の産物はPリング形成の調節因子であると仮定される. この点を明らかにするため, 本年度はflaFI遺伝子の解析を行った. まず, サルモネラ染色体からflaFIをふくむDNA領域をクローン化し, その塩基配列を決定した. その結果から予想されるflaFI遺伝子産物は, 209個のアミノ酸からなる分子量22400の蛋白質であった. これは疏水性のアミノ酸に富み, 膜蛋白質である可能性が示唆された. データ・ベースを用いて既知の蛋白質との相同性を検索したが, 有意な相同性を示すものは見つからなかった. ところで, flaFI遺伝子の欠失突然変異体はleakyであり, わずかながら鞭毛形成がみられ弱い遊走性を示す. このことは, flaFI蛋白質が鞭毛の構造形成と機能発現において迂回可能な過程に関与していることを示唆するものである. そこでflaFI欠失突然変異体から遊走性を大きく回復した抑圧突然変異体を分離することを試みた. その結果3株の変異体が得られたので, これらをflfFI突然変異体と命名した. 遺伝解析の結果, これらの突然変異は繊維構成蛋白質フラジェリンの構造遺伝子H1のプロモーター近傍に位置づけられた. このことからPリング形成と繊維形成との相関が示唆された.
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Research Products
(3 results)
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[Publications] Ohnishi,K.: J.Bacteriol.169. 1485-1488 (1987)
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[Publications] Iino,T: J.Gen.Microbiol.133. 779-782 (1987)
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[Publications] Kutsukake,K: 細胞. 19. 323-328 (1987)