1987 Fiscal Year Annual Research Report
安定同位体ラベルーNMRスペクトルによる蛋白質の動的高次構造の研究
Project/Area Number |
62220026
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Research Institution | Tokyo Metropolitan University |
Principal Investigator |
甲斐荘 正恒 東京都立大学, 理学部, 助教授 (20137029)
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Keywords | 安定同位体ラベル法 / ^<13>C-NMR / 蛋白質立体構造 / SSI / プロテアーゼ・インヒビター / プロラアーゼ |
Research Abstract |
蛋白性プロテアーゼ・インヒビターSSIの溶液内における立体構造の揺らぎは, SSIの機能と構造の理解にとって必須の情報である. 我々はSSIの主鎖カルボニル炭素のNMRシグナルを利用することにより, SSIにおける主鎖ポリペプチド構造の揺らぎについて詳しく検討した. 揺らぎ易い部分の特定には低温におけるSSIのカルボニル炭素NMRの線幅の比較が直接的情報を与える. N-末端数残基は結晶中において運動性が高いためか, 或いは静的なパッキング構造の乱れのいずれかにより, X線回折において電子密度が殆ど観測されない. 我々は会合状態にあると思われる高濃度SSI溶液を用いて, N-末端より6残基は溶液内において極めて高い運動性にあることを明瞭に示した. さらに, 詳細なスペクトルの温度依存性の測定などから結晶構造中, 温度因子の高い部分のカルボニル炭素シグナルの線幅が鋭いことを見出した. このような部分は50%重水中におけるカルボニル炭素シグナルの線型を利用するDEALS法を利用して明らかにできる場合も多い. SSIの機能との関連上最も重要な情報はサブチリシンとの複合体形成に伴う構造変化が, 阻害機能の発現機構とどのように関わってくるかを知ることにある. 遊離の状態でのSSIの立体構造の形成原理を解き明かすことによりこのような情報が得られると考え, SSIの立体構造が二つのドメインからなりたち, その一方の構造(ドメイン2)が機能発現に最も直接に関与すると考えることにより多くの事実が統一的に理解できる. SSIの機能を特徴づける阻害活性の広いスペクトルはこの機能ドメインのもつ本質的な柔らかさにより説明可能である. 今後は蛋白質の動的構造と機能との関わりの重要性を実験的に指摘するために, これらの仮説を出発点として種々のプロテアーゼとの複合体形成に伴うSSIの構造変化の多様性を実験的に証明する予定である.
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[Publications] Kainosho,Nagao,Tsuji: Biochemistry. 26. 1068-1075 (1987)
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[Publications] W.M.Westler,M.Kainosho,H.Nagao,N.Tomonaga,J.L.Markley: J.Amer.Chem.Soc.
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[Publications] 甲斐荘,内田,長尾: 蛋白質・〓〓・〓素(別冊). 32. 40-55 (1987)
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[Publications] 甲斐荘,三宅,内田: 日本農芸化学会誌. 62.