1987 Fiscal Year Annual Research Report
オス型交尾行動の学習性要因に関する行動生理学的研究
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62221020
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
下河内 稔 大阪大学, 人間科学部, 教授 (60029999)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
志村 剛 大阪大学, 人間科学部, 助手 (80150332)
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Keywords | オス型交尾行動 / ニューロン活動 / 内側視索前野 / 扁桃体 / 外側被蓋 / ラット / 経験 / 嗅覚刺激 |
Research Abstract |
オスラットを対象に, オス型交尾行動の発現に不可欠な内側視索前野ならびに, この部位と密接な線維連絡があり, しかもオス型交尾行動への関与が示唆されている扁桃体・中脳外側被蓋から, 実際の交尾行動中のニューロン(マルチユニット)活動を記録し, 3部位のニューロン発火パターンを比較して各部位の役割を特定するとともに, メスの発情の有無の認知や, 交尾動作の習熟などの学習性要因との関連についても検討した. 内側視索前野ではこれまで筆者らが報告してきたように, 1)メス導入から射精に至るまでの持続的な発火数の増加と, 2)1回毎のmount,intromission,ejaculationに伴う著明な発火数の増加を同時に示すユニットが多かった. 扁桃体では記録した35%(12/34)のニューロン活動において, メス導入から実際の交尾開始までの期間に, それ以前のレベルよりも発火数が増加した. これらのユニットはメスが発する嗅覚刺激に応答し, 交尾の開始に関係している可能性がある. これに対し, 射精まで持続的に高い発火レベルを保った内側視索前野のユニットは交尾行動の維持にも関連していると考えられる. 交尾行動が出現する際には, おそらく扁桃体を介して交尾の開始に関係する情報が内側視索前野に入力されるのであろう. 中脳外側被蓋では追尾, スラスト, 性器なめなど, 個々の交尾動作と時間的に対応して増減する数種類の動作特異性ユニット活動が数多く記録できた. これに対し, 内側視索前野ユニットの発火パターンは追尾からスラストにかけて急激に増加し, 性器なめ行動では基線レベルよりも減少するという一定のパターンを示すものが大部分であった. このことは, 内側視索前野が交尾遂行の全体的な指令を中脳外側被蓋へ送り, 中脳外側被蓋の個々のユニットはそれぞれの細かい運動遂行の調節に関係していることを示唆する. なお, これら3部位にみられたニューロン活動の経験による変動性は現在比較検討中である.
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 下河内 稔 堀尾 強 志村 剛 花田百造: 神経研究の進歩. 31. 490-503 (1987)
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[Publications] 堀尾 強 志村 剛 下河内 稔: 生理心理学と精神生理学.5. 68 (1987)
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[Publications] Shimura,T.;Horio,T.;Shimokochi,M.: J.Physiol.Soc.Japan. 49. 443 (1987)
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[Publications] 志村 剛 下河内 稔: 大阪大学人間科学部紀要. 13. 197-226 (1987)
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[Publications] Shimura,T.;Shimokochi,M.: Neuroscience Research. (1988)