1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62222014
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
北村 幸彦 大阪大学, 医学部, 教授 (70028520)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
仲野 徹 大阪大学, 医学部, 助手 (00172370)
金倉 譲 大阪大学, 医学部, 助手 (20177489)
藤田 潤 大阪大学, 医学部, 助教授 (50173430)
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Keywords | 肥満細胞 / 血栓症 / 塞栓症 / ヘパリン / 肥満細胞欠損マウス / 骨髄移植 |
Research Abstract |
肥満細胞はヒスタミン, ヘパリン, プロスタグランディンのように血管に作用しうる化学物質を生産し, 形態学的にも小血管の近傍に多数存在している. しかし肥満細胞が血管に対していかなる生理作用を持っているかという点についてはほとんど明らかにされていない. ヒスタミンのように肥満細胞から放出された後血管を拡張さすという生理作用がはっきりしている物質はむしろ例外であり, ヘパリンのように特異的に肥満細胞に含まれていることが知られており, 化学物質としては抗凝固作用を持つことがよく知られた物質でも, 肥満細胞から放出されたヘパリンがin・vivoで血流の維持のために実際働いているという証拠にとぼしい. そこで我々の発見した肥満細胞欠損マウスW/W^vと正常対照マウス(+/+)の間で血栓-塞栓症の発症に関して差があるかどうかをしらべた. 市販の墨汁を生理食塩水で種々の濃度に稀釈しW/W^vマウスと+/+マウスの尾静脈から注射した. 10%の墨汁を0.04ml/g体重注射すると+/+マウスは24時間以内に6%しか死亡しなかったが, W/W^vマウスは81%も死亡した. 死亡の前には四肢の麻痺を示し, 大脳表面には黒色の血栓-塞栓がみられたので, 墨汁注射によるW/W^vマウスの死亡の原因は脳の血栓-塞栓症のためと考えられた. 実際大脳表面の血栓-塞栓を実体顕微鏡下で算定してみると, +/+マウスでは平均5個であったのに対してW/W^vマウスでは平均21個と有意に多かった. ヘパリンを墨汁注射に先だってW/W^vマウスに注射しておくと大脳の血栓-塞栓はみられなくなり死亡するマウスはなくなる. またW/W^vマウスに+/+マウスの骨髄細胞を移植することによりW/W^vマウスの肥満細胞欠損症を治療しておくと, 墨汁注射後の血栓-塞栓の個数は減少し, 死亡率も有意に減少した. この結果は肥満細胞から放出されるヘパリンが血栓-塞栓を防ぐ可能性を示唆している.
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[Publications] Nakano,T.: Federation Proceedings. 46. 1920-1923 (1987)
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[Publications] Otsu,K.: Journal Of Experimental Medicine. 165. 615-627 (1987)
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[Publications] Galli,S.J.: American Journal of Pathology. 127. 191-198 (1987)
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[Publications] Matsuda,H.,: Journal of Parasitogy. 73. 155-160 (1987)
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[Publications] Kitamura,Y.: International Archives of Allergy and Applied Immunology. 82. 244-248 (1987)
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[Publications] Nakano,T.: Journal of Immunology. 138. 544-549 (1987)
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[Publications] Chaouat,G.,ed Kitamura,Y.: "Ontogeny of mast cells. In.The Immunology of the Fetus" CRC Press,Boca Raton,FL,