Research Abstract |
1.各班ごとに各個に文献を選び資料として検討し, 問題点を探っている. 次年度も, これを継続する. 2.第一回の全体会議で, 心概念について共通認識を得るため基調発表と討論を行った. その一端は以下の通りである. 哲学概念としての心の問題は, 孔子の忠恕, 孟子の性善説による"尽心"に始まると見られるが, この後, 心の働きについて様々の分析が行われた. 未発己発の論や, 性と情, また, 人心と道心という区分も心の働きを分析した現れである. 朱子学の心概念定義としては, 陳淳の「北渓字義」が, 陽明学では, 日本の三重貞亮の「三学名義」が大変よい資料である. 朱子学の「心」は, 性・情を統括し, 性は理, 情は気とし, 性の完全な実現を理想として, 情を消極的に評価するが, 陽明学の「心」は, 性・情を一体として捉え, その本体を"良知"として積極的に評価する. なお, 明学の心概念を考えるには, 人心・道心をどう考えているかが, よい指標となると思われる. 次年度この点について調査したい. 3.第二回の全体会議で個別の発表を通じて討論を行った. (1)今まで, 理の哲学と気の哲学と分類し, 哲学史の二つの流れとして見てきたが, 本来理と気とは一元化し得るものではないか. その場合, 理と気とは理気論の一つの指標となるにすぎないとする見解が提出された. (2)唐代では, 韓愈の「原性」李〓の「復性書」張籍の「遺伝第一書」欧陽誉の「自明誠論」皇甫〓の「孟子荀子言性論」を検討した. (3)陽明学の展開については, 羅近渓の諸資料についての基礎作業と多少のコメントを発表した. 今後, なお深めて結論を出したい. 4.先秦・漢代については, 五経, 「史紀」「国語」の史書, 諸子書8種について, 「心」の語, 並びに関連語彙のカード資料を作成した. これから検討, 吟味が必要である.
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