Research Abstract |
鉄筋コンクリート構造物の靭性を総合的に評価するために, 本年度, 以下の事項について研究を行い, 成果を得た. 1.国内における, 土木・建築両分野における既往の鉄筋コンクリート部材の靭性に関する研究をとりまとめ, その中から橋脚および柱を対象とした217体についてデータベースを作成した. データベースの内容は, 部材の形状寸法, せん断スバン比, 加力方式, 軸力, 軸方向鉄筋の量および有効高さ, 多段配筋の詳細, 腹鉄筋の量および間隔, コンクリート強度, 鉄筋の降伏点引張強さ, せん断耐力, 曲げ耐力, 降伏荷重, 最大荷重, 降伏変位, 終局変位, 靭性率, 破壊モード等の27項目に及ぶものである. 2.データベースをもとにして, 個々の要因が靭性率に及ぼす影響について統計的に処理を行った. その結果, 次のことが明らかとなった. (1)軸方向鉄筋(多段配筋も含む)の量が増加するにつれて, 靭性率は低減する. (2)帯鉄筋比が大きくなるとともに, 靭性率は増加する. (3)せん断スバン比が小さい程, 靭性率は小さくなる. (4)軸圧縮応力が高くなる程, 靭性率は小さくなる. (5)ある変位における繰返し回数が多くなる程, 靭性率は低下する. (6)曲げ耐力に対するせん断耐力の比が大きくなる程, 靭性率は大きくなる傾向がある. 以上のように, 個々の要因が靭性率におよぼす影響については定性的に確かめられたが, 理論的な解明までは至っていない. 3.データベースを用いて, 既往の靭性率算定式の精度を検討した. 用いた靭性率算定式は, 土木および建築で提案された6種類のものである. その結果, すべての要因について, 靭性率を精度よく評価できる算定式はなく, 限られた範囲について適用可能であることが確かめられた. 今後は, データベースをもとにして, (1)精度よい靭性率算定式の確立, (2)靭性能の理論的解明を行う予定である.
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