1988 Fiscal Year Annual Research Report
分子内非共有相互作用による錯体構造の制御と立体選択的反応への応用
Project/Area Number |
62430011
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
大川 尚士 九州大学, 理学部, 助教授 (00037219)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
新名主 輝男 九州大学, 理学部, 助手 (90037292)
香月 勗 九州大学, 理学部, 助手 (40037271)
村瀬 一郎 九州大学, 教養部, 教授 (70038371)
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Keywords | 円二色性スペクトル / コンホーメーション解析 / レジオナル則 / 不斉還元 / ランタノイド錯体 / ルイス酸触媒 |
Research Abstract |
1.エチレンジアミンの窒素の一つにキラルな疎水性基として、lーメンチル、(R)ーαーメチルべンジル、(S)ーαーメチルベンジル基を導入した誘導体(それぞれL^1、L^2、L^3と略)を開発し、そのCu(11)、Pd(11)、Pt(11)錯体の立体選択性を円二色性分散計を用いて検討した。いずれの錯体も配位子場吸収帯に強い光学活性を示し、キラルな疎水基の分子内非共有相互作用(vicinal effect)で窒素周りの立体配置およびエチレン配座が制御されることが初めて示された。このことは錯体構造を制御する上で新しい有力な方法を提供する。つぎに窒素の配置とエチレンのコンホーメーション(配座)を決定するために、(R)ープロパンジアミンおよび誘導体の金属錯体の円二色性スペクトルを詳細に検討した結果、レジオナル則(tetragonal rule)を用いると矛盾なく説明が可能であり、L^1およびL^2の場合のエチレン配座はδ、L^3ではλと結論された。この結果を基にすると、従来帰属が瞹昧であったキラルなNー置換ジアミン平面錯体の構造も円二色性スペクトルをもとに説明できることが示された。 2.1ーlーメンチルオキシー3ー(pートリル)ー1、3ーペンタジオンの1:3ー型六配位ランタノイド錯体[Ln(lーmobaーMe)_3]は、分子配位子間非共有相互作用のためにfacーΛ配置を取ることを明らかにしてきた。一般にランタノイド錯体は(i)配位置の基質をとりこみ6配位以上の配位構造をとる、(ii)3+の酸化数が安定で酸化還元を受にくい一等の特微を備えている。そこで[Ln(lーmobaーMe)_3]をキラルなルイス酸触媒として用いてケトンのエネンチオマー選択的還元反応を開発することを試みた。基質としてアセトフェノンを選び、La、Pr、GdおよびEr錯体をホスト触媒、NaBH_4を還元剤に用いてシクロヘキサン中で反応させたところ、いずれの場合にも(S)ー1ーフェニルエタノールが主生成物として得られた。不斉収率を向上させるための条件を検討することが今後の課題である。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 松本尚英: Journal of Chemical Society,Dalton Transaction. 1943-1948 (1988)
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[Publications] 大川尚士: Inorganic Chemistry. 27. 4373-4377 (1988)
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[Publications] 神田和香子: Inorganica Chimica Acta. 146. 193-198 (1988)
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[Publications] 大川尚士: Coordination Chemistry Reviews. 92. 1-28 (1988)
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[Publications] 坂本政臣: Bulletin of The Chemical Society of Japan. 61. 3319-3320 (1988)