画像解析による腫瘍の異型度の数値化:胃・大腸の良性悪性組織診断の容観化

1988 Fiscal Year Annual Research Report

• Project/Area Number: 62440029
• Research Institution: University of Tsukuba
• Principal Investigator: 中村 恭一 筑波大学, 基礎医学系, 教授 (70110492)
• Co-Investigator(Kenkyū-buntansha): 斉藤 澄 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (20114754) ; 菊池 正教 筑波大学, 基礎医学系, 講師 (90110501) ; 藤井 敬二 筑波大学, 基礎医学系, 助教授 (00091926)
• Keywords: 異型度数値変換 / 良性悪性判別式 / 癌組織発生 / DE NOVO CANCER / 癌発育進展過程

Research Abstract

大腸癌組織発生『大腸癌の殆ど総ては腺腫の癌化したものである』が、世界で一般的に受け入れられている。しかし、一旦その観点から大腸の腺腫と癌に関する諸々の臨床病理学的事象を眺める時、そこからは幾つかの矛盾と奇怪な現象が派生してくる。したがって、その癌組織発生は明らかに誤りである。本研究の目的は、大腸癌の構造の礎である癌組織診断基準の客観化から出発して、臨床病理学的に整合性のある大腸癌の構造を再構築することにある。
コンピューター画像解析装置を用いて異型度数値変換を行なった結果、細胞異型度INGと構造異型度ISAが統計的に異型度の指標となり得ることが明らかとなった。それからは良性悪性振り分けのための判別式F_<CA>=0.08ING+0.04ISA-6.47が導かれた。判別式を用いてことによって得られた結論は、以下の如くである。(1)大腸癌組織診断基準:判別式からは、現在の癌組織診断基準によるパターン認識では一部の癌を良性腺腫と診断していることになる。(2)大腸癌組織発生:大腸癌の70癌肉眼形態変化:癌発生から形態変化の主経路はde novo cancerのIIc,IIa→IIa+IIc,Is,IIc→Borrmann 2である。腺腫由来の癌は、一般的に有茎性の発育を示し、Borrmann 2型へ発育することは稀である。(4)癌浸潤:De novo cancer では、大きさ1cm前後で粘膜下組織へ、そして2cm前後で固有筋層へ浸潤する傾向がある。腺腫由来の癌では、大きさ2cm前後で粘膜下組織へ浸潤する傾向がある。(5)癌早期発見のための標的病変:大きさ1cm前後のIIc,IIa,IIc+IIaである。(6)腺腫の癌化率:0.03以下である。したがって、いくら有茎性腺腫のポリペクトミーを行なっていても、それは大腸進行癌の数の減少にはならない。

Research Products

• [Publications] Sanemoto,Togo;Kyoichi,Nakamura;Masanori,Kikuchi: 13th International Cancer Congress(Seattle,USA). 13. 388 (1982)
• [Publications] 東郷実元,中村恭一: 胃と腸. 18(4). 423-432 (1983)
• [Publications] 菊池正教,中村恭一,赤羽久昌,渋谷進: 胃と腸. 19(10). 1117-1125 (1984)
• [Publications] 渋谷進,中村恭一,池園洋,東郷実元,菊池正教: 胃と腸. 19(12). 1341-1348 (1984)
• [Publications] 中村恭一,渋谷進,西沢護,牧野哲也: 胃と腸. 20(8). 877-888 (1985)
• [Publications] 中村恭一,渋谷進,大倉康男: 日本医事新報. 3227. 126-129 (1986)
• [Publications] 大倉康男,渋谷進,中村恭一: Mebio. 3(8). 126-127 (1986)
• [Publications] Akabane,H.;Kikuchi,M.;Kyoichi,N.: 14th INTERNATIONAL CANCER CONGRESS. No.271. 74 (1986)
• [Publications] 大倉康男,中村恭一: 胃と腸. 22(4). 431-441 (1987)
• [Publications] 大倉康男,中村恭一: 日本大腸肛門病学会誌. 40. 699-707 (1987)
• [Publications] 中村恭一: 日本大腸肛門病学会誌. 41(4). 428-441 (1988)
• [Publications] 中村恭一,大倉康男,伴慎一,石堂達也: Mebio. 5(5). 51-54 (1988)
• [Publications] 中村恭一,大倉康男,石堂達也,伴慎一,西沢護,牧野哲也: 消化器科. 9(3). 259-288 (1988)
• [Publications] 大倉康男,中村恭一: 臨床科学. 24(3). 303-317 (1988)
• [Publications] 中村恭一,石堂達也,大倉康男,伴慎一,斉藤澄: 第47回日本癌学会総会記事(東京). 47. 32 (1988)
• [Publications] 大倉康男,伴慎一,中村恭一: 第47回日本癌学会総会記事. 47. 350 (1988)
• [Publications] 石堂達也,伴慎一,大倉康男,斉藤澄,菊池正教,中村恭一,牧野哲也,西沢護: 第47回日本癌学会総会記事. 47. 347 (1988)
• [Publications] 伴慎一,斉藤澄,石堂達也,大倉康男,中村恭一: 第47回日本癌学会総会記事. 47. 358 (1988)
• [Publications] 大倉康男,伴慎一,中村恭一: 病理と臨床. 6(9). 1043-1051 (1988)
• [Publications] 中村恭一: 日本病理学会誌. 77. (1988)
• [Publications] 大倉康男,中村恭一,伴慎一,石堂達也,斉藤洋子,尾辻真人: 胃と腸. 24(3). (1989)
• [Publications] 中村恭一,大倉康男,石堂達也,伴慎一,西沢護: "『第47回日本癌学会/パネル臓器癌・最近のトピックス』" 篠原出版, (1989)