1989 Fiscal Year Annual Research Report
脳におけるアセチルコリン受容体ーソマトスタチン相関に関する生化学的研究ー痴呆のメカニズムとの関連においてー
Project/Area Number |
62440036
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Research Institution | HIROSHIMA UNIVERSITY |
Principal Investigator |
鬼頭 昭三 広島大学, 医学部, 教授 (00010140)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三好 理絵 広島大学, 医学部, 助手 (80209965)
下山 政憲 広島大学, 医学部, 講師 (60136067)
山村 安弘 広島大学, 医学部附属病院, 講師 (10106388)
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Keywords | 哺乳類脳 / 神経伝達物質受容体 / 神経ペプチド / 神経薬理学的研究 / ムスカリン性アセチルコリン受容体 / ソマトスタチン / 細胞内カルシウムイオン濃度 / ガラニン |
Research Abstract |
これまでの実験成績から、ラット海馬においてソマトスタチンはムスカリン性アセチルコリン受容体(mAChR)のアゴニストの結合親和性を低下させること、mAChR刺激により亢進したイノシト-ルリン脂質代謝(PI turnover)を更に増強させることを見いだしている。このようなソマトスタチンの作用はmAChRの細胞内反応を活性化していると見なされ、従来から知られている抑制性神経ペプチドとしてのソマトスタチンの反応からは説明しにくいものである。そこで、我々は海馬でのソマトスタチンの細胞内応答を明確にすることを目的とした。ソマトスタチンはPI turnoverを亢進させなかったが、細胞内カルシウムイオン濃度〔[Ca^<2+>]i)を上昇させることを見いだした。この作用は濃度依存性であった。Ca^<2+>-freeの溶液を用いた実験から、ソマトスタチンによる[Ca^<2+>]i上昇のCa^<2+>供給源は全て細胞外であることがわかった。また、ソマトスタチンの作用はN型Ca^<2+>チャンネル拮抗剤であるω-conotoxinにより完全に抑制されたため、Ca^<2+>はN型Ca^<2+>チャンネルを通して流入してくるものと考えられた。海馬におけるソマトスタチンの興奮方向への作用は以前にも電気生理学的立場からのいくつかの報告があり、ソマトスタチンは海馬でユニ-クな細胞内応答を起こすのではないかと思われる。中隔ー海馬コリン作動性ニュ-ロンと密接な関連をもつ他の神経ペプチドとして、ガラニンがある。ガラニンはmAChR刺激によるPI turnoverを低下させることが報告されている。我々はガラニンが[Ca^<2+>]iを低下させることを認めた。したがって、ソマトスタチンとガラニンは[Ca^<2+>]iに対し逆の作用を引き起こし、その結果としてそれぞれmAChR機能の増強と低下へと逆方向の効果をもたらすのではないかと考察される。神経ペプチドによる古典的神経伝達物質系の修飾に[Ca^<2+>]iが重要であることは我々の他の実験例からも示唆されており、今後[Ca^<2+>]iの変化が起こった後の反応系について研究を進めていく予定である。
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Research Products
(8 results)
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[Publications] R.Miyoshi: "Somatostatin increases intracellular Ca^<2+> concentration in cultured rat hippocampal neurons" Brain Research. 489. 361-364 (1989)
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[Publications] M.Shimoyama: "Effect of cerulein on in vivo release of acetylcholine from the rat striatum" Brain Research. 492. 381-384 (1989)
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[Publications] R.Miyoshi: "Quantitative autoradiographic localization of the M_1 and M_2 subtypes of muscarinic acetylcholine receptors in the monkey brain" Japanese Journal of Pharmacology. 51. 247-255 (1989)
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[Publications] R.Miyoshi: "Modulation of dopamine D1 receptor binding by neurotensin in the rat striatum" Neurochemistry International. 15. 493-496 (1989)
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[Publications] S.Murakami: "The colocalization of substance P- and somatostatin-like peptides in neurons of the entopeduncular nucleus of rats" Peptides. 10. 973-977 (1989)
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[Publications] R.Miyoshi: "Ontogeny of phorbol ester receptors in rat brain studied by in vitro autoradiography" Journal of Neural Transmission. (1990)
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[Publications] S.Kito: "Proceedings of Uehara Memorial Foundation Symposium on Mechanism of Transmembrane Signalling" Elsevier, 9 (1989)
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[Publications] R.Miyoshi: "Basal Ganglia III" Plenum Press, (1990)