1988 Fiscal Year Annual Research Report
HBウィルスX遺伝子発現動態よりみたB型肝炎進展機序および発癌機構の解析
Project/Area Number |
62440037
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
鎌田 武信 大阪大学, 医学部, 教授 (80028399)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 裕 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
笠原 彰紀 大阪大学, 医学部附属病院, 医員
林 紀夫 大阪大学, 医学部, 講師 (00144478)
房本 英之 大阪大学, 医学部, 助手 (90124776)
佐藤 信紘 大阪大学, 医学部, 講師 (90028358)
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Keywords | HBウィルス / B型肝炎 / 慢性肝炎 / 肝硬変 / X遺伝子 / 肝癌 |
Research Abstract |
HBウィルスゲノム上のX-geneのほぼ全領域(BamHI-BglII fragment)を含むプラスミドを作成し, 大腸菌にtransferさせて分子量約17KDのXー蛋白を発現させた. 更にこのX蛋白をrabbitに免疫しX抗体を得た. 次に, このX蛋白, X抗体を用いて, HBs抗原陽性の慢性肝疾患における血清中のX抗体をWestern blot assayにて, 肝組機中のX抗原を間接蛍光抗体法にて検討した. 血中X抗体の陽性率は, 慢性肝炎28%(7/25), 肝硬変52%(11/21), 肝癌56%(5/9)で, 慢性肝炎に比べ肝硬変・肝癌で陽性率が高かった. 今回の検討では, 血中X抗体出現の有無とHBe抗原・抗体系との間には相関関係は認めなかった. 肝組織中X抗原の発現は, 肝細胞質中に蛍光の陽性構造が散在して認められ, 門脈域に多い傾向が見られた. 肝組識中X抗原陽性率は, 慢性肝炎69%(9/13), 肝硬変50%(5/10)で, 慢性肝炎に比し肝硬変でやや低値であった. 担癌の慢性肝炎においては, 非癌部の肝細胞質にX抗原の発現がみられたが, 癌部には見られなかった. 血中X抗体と, 肝組織中X抗原の両方を検索した23例では, 肝組織中X抗原の発現している例では血中X抗体を認められず, 一方血中X抗体の見られる例では肝組織中X抗原は1例を除いて認められなかった. また, X抗原/X抗体と, HBV replicationの指標であるDNAポリメラーゼや, 肝細胞中のHBV量と相関のある血中HBV-DNAとの間に相関関係は認められなかった. 以上, B型慢性肝疾患病初期にX抗原が発現し, 病期の進行にともないX抗原の発現が抑えられX抗体が出現してくることが示唆された.
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