1988 Fiscal Year Annual Research Report
高グリシン血症の病態・病因の解明:遺伝子レベルの解析
Project/Area Number |
62440042
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
多田 啓也 東北大学, 医学部, 教授 (20046907)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 正広 東北大学, 医学部附属病院, 助手
大浦 敏博 東北大学, 医学部附属病院, 助手 (10176828)
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Keywords | 非ケト-シス型高グリシン血症 / グリシン開裂反応 |
Research Abstract |
高グリシン血症(非ケト-シス型)は生後まもなくより重篤な中枢神経系症状で発症し、乳児早期に死亡するか幸い死を免かれても高度の脳障害を残す遺伝性代謝疾患である。血液、髄液中グリシン濃度の著明な上昇が特徴的であり、本症の代謝障害はグリシン開裂酵素の欠損に基づくことが1969年吾々に上り初めて証明された。グリシン開裂酵素は4つの蛋白から構成される複合酵素であり、ピリドキサル燐酸を補酵素とするPー蛋白、リポ酸を含むHー蛋白、テトラヒドロ葉酸を必要とするTー蛋白リポアマイド脱水素酵素(Lー蛋白)から構成されることが知られている。本研究では本症20例についてこれら成分蛋白の分析を行なった。その結果20例のすべてに於て肝グリシン開裂反応の著明な低下が見出され、測定し得た9例(剖検例)の脳においても同様の低下が認められた。新生児型ではグリシン開裂活性が全く認められないか、著明な低値を示し、一方遅発型では若干の残存活性が認められた。すなわち、グリシン開裂反応の障害の度合が本症の発症時期、重症度を規定しているものと推測された。成分蛋白の分析では新生児型16例中13例においてPー蛋白の特異的欠損が見出され、3例にTー蛋白の特異的欠損が見出された。新生児型9例では脳の成分蛋白の分析も行い得たが肝と全く一致する結果が得られた。これらの成績により非ケト-シス型高グリシン血症には少くとも2つの型、すなわちP蛋白の欠損に基づくものとT蛋白に基づくものとがあることが示された。さらにP蛋白欠損を示した新生児型症例6例についてP蛋白の特異的抗体を用いて調べた結果、Ouchterlony法でもimmunotitration法でもP蛋白は全く証明されなかった。それに対して遅発型でP蛋白の部分欠損を示した症例ではP蛋白抗体に対するCRM(抗体と反応する蛋白)が検出された。
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Research Products
(5 results)
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[Publications] 多田啓也: Enzyme. 38. 27-35 (1987)
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[Publications] 多田啓也,早坂清: European J. of Pediatrics. 146. 221-227 (1987)
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[Publications] 早坂清,多田啓也 他: J. of Pediatrics. 110. 873-877 (1987)
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[Publications] 久米晃啓,多田啓也 他: Biochem.Biophys.Res.Comm.154. 292-297 (1988)
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[Publications] 多田啓也: 日本臨床. 46. 217-229 (1988)