Research Abstract |
1.道徳性診断検査の作成, (1)外面的行動傾向. まず文部省学習指導要領に示されている28の道徳内容に関して,その実現度を調べるためのテストを作成した. (テストA)(2)内面的形成水準. ついで道徳的行動の実現度の背景にある理由・構造を問うために,先行諸研究をも十分に参照の上,I.欲求充足型,II.他者志向型,III,規範連的型,IV.自律的・愛他型,の発達的4類型から成るテストを作成した. (テストB) 2.結果,(1)被険者.このテストを小学校児童2,263名(男子1,199名,女子1,064名)に施行した. また55名の教師に自らの担任する児童495名に評価を依頼した. (2)テストAの結果,(1)28の道徳内容の中26内容に関し,統計的に有意な水準で,低学年の方が高く,中学年がこれに次ぎ,高学年が最低というショッキングな結果が得られた. (2)性差に関しては,大多数の項目において,女子の方が男子よりも高い得点が得られた. (3)因子分析の結果,(A)思いやり,(B)自己確立,(C)生活規範,(D)対社会,の4因子が抽出されたが,そのいずれにおいても低学年の方が高得点を示していた. (3)テストBの結果,テストAでの高得点群,低得点群に分けて分析した. (1)高得点群の中では,領域(A),(B)において,低学年から高学年にかけ,内面的形成水準得点は有意に上昇していた. (2)低得点群の中では,領域(A)では,中学年から高学年にかけて内面的形成水準得点の有意な上昇が認められた. (4)テストの妥当性の検証,(1)道徳教育に熱心なベテラン教師の学級の児童と,一般学級の児童とを比較すると,テストA・Bとも,4領域のいずれにおいても,前者は後者よりも有意に高く,テストの妥当性を示す知見が得られた. (2)児童の自己評価と教師評価を比較検討すると,各種の有意な関連が認められ,児童の自己記述方式による道徳性診断検査による測定の試みが,方法的に妥当であることが示された.
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