1988 Fiscal Year Annual Research Report
貧困層子弟の社会的自立と貧困の世代的継承に関する基礎研究
Project/Area Number |
62450025
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Research Institution | Faculty of Education, Hokkaido University |
Principal Investigator |
杉村 宏 北海道大学, 教育学部, 助教授 (20113574)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
木村 純 名寄女子短期大学, 助教授 (90153212)
木村 保茂 北海道大学, 教育学部, 助教授 (40003959)
高山 武志 北海道大学, 教育学部, 教授 (90002253)
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Keywords | 社会階層 / 社会的自立 / 貧困の世代的継承 |
Research Abstract |
今年度は、昨年度集収した釧路児童相談所における「養護相談」ケースの事例分析と、養護施設出身者の生活構造分析に関する調査を行なった。 1.「養護相談」ケースの事例分析では、家族の解体の類型化を行ない、養護問題形成のメカニズムの解明を行なった。その際家族形成時点における生計中心者の属する社会階層を起点として、その移動と地域移動に注目して児童の養護問題の発生がどのような条件で起るのかを事例分析した。 2.その結果、「養護問題」は単に養育者を欠く状態で起るのではなく、家族解体の過程で起ること、および個別的、特殊的原因でこのような状態がひき起されるようにみえながら、家族形成時の社会階層に強く規定されていることが明らかになった。 3.養護施設出身者の生活構造分析は、貧困階層子弟の社会的自立の過程分析に様々な示唆を与えるものと考えられる。貧困階層子弟がその出身階層から脱し、新たな生活の枠組をもち得るか否かが、自立にとって決定的に重要であるからである。しかしその際家族・親族のネットワークに依存することはほとんど困難な状況であるために、労働に結びついた社会的ネットワークの構築が不可欠であるが、低い学歴水準と住居の確保におわれるために、窮迫的就労の傾向が強く貧弱なネットワークの形成にとどまる事例が多いことが明らかになった。社会的諸サービスの系統的な充足なしには、貧困の世代的継承を有効に阻止することはむずかしいと考えられる。
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