1988 Fiscal Year Annual Research Report
借地・借家法の政策論的研究-北海道における実態調査を基礎として-
Project/Area Number |
62450065
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
瀬川 信久 北海道大学, 法学部, 教授 (10009847)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
林田 清明 北海道大学, 法学部, 助教授 (50145356)
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Keywords | 借地法 / 札幌 / 法改正 / 実態調査 |
Research Abstract |
1.本年度前半には、前年度に実施した借地借家実態調査を補充し、また、札幌・函館・その他の都市の、借地・借家に関する文献・統計資料を収集した。年度後半には、得た知見を論文「札幌市における借地」にまとめた。そこでは都市成長過程における借地の理論モデルを提示した。すなわち、 2.(1)都市の外縁地域では農地所有者が、居住用、事業用の土地を提供してきた。この地域では地下上昇の期待が小さいため、売却が多く貸地は少ない。貸地する場合でも、借地人が早晩敷地を買取ることが多い。(2)都市の中心部と隣接地域の借地は歴史的に変化してきた。すなわち戦前は、居住用借地が非常に多かった。それは、売買地価に対し収取地代が多額であり、貸地経営の利潤が大きかったことと、持家促進政策がなく、勤労者世帯が住宅地を取得できなかったからである。この状況では貸地が継続されるから、借地期間を約定しないことが多かった。戦後になると、まず財産税によって中心部の大規模貸地所有は崩壊した。次に高度成長以後、地価高騰のために地価に対する地代の割合が低下し、他方では利用転換による高収益が可能になった。この状況変化のゆえに、特に中心部の小規模貸地は解消し、新規の借地設定もなくなった。もっとも、商店等はしばしば特定の土地を必要とするので、借地人が事業者である場合には、従来の借地関係が維持され、あるいは新規の借地が設定される。こうして中心部・隣接地域の借地は事業用のものに収斂して行く。そのなかには、権利性の強い古くからの事業用借地と、権利金・敷金を伴う新しいタイプの事業用借地とがある。 3.権利金・敷金・更新料等の地方的な慣習は、札幌に関する限り、東京の知識の導入も明らかにした。 4.借家についても、収取した資料を都市の成長の観点から分析し、理論モデルを提示したいと考えている。
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Research Products
(1 results)