Research Abstract |
アダム・スミスの蔵書約2000点(5000冊をこえる)について,カードによるカタログはほぼ完了したし,それらの蔵書をスミスがどう利用したか(著作のなかでの引用と言及),それらの蔵書のなかでスミスがどのように評価され,利用されたかということを中心にした注記も,ほぼ完了した. 後者については,エディンバラ大学教授ジョン・ブルース,セント・アレドルーズ大学教授ウィリアム・バロンなどのように,これまでのスミス研究の視野にまったくはいっていなかった思想家がうかびあがってきたし,さらにヨークの非国教徒牧師ナサニエル・キャップが,スミスとしたしく交際・文通していたことがわかり,さらに資料を探求すれば,スミスの宗教論を知る手がかりがえられるかもしれないとおもわれる(ただし,現在までのところ,それ以上の手がかりはない). 今後は,カードから出版原稿を編集する作業を継続し完了することになるが,そのさいの問題点はつぎのとおりである. 1.スミス自身が1781年につくらせた手書きの蔵書目録(東大経済学部所蔵)のショートタイトルからフルタイトルを確認する作業は,イギリス,フランス,スイスの図書館で可能なかぎり,終了したが,なお,アメリカの図書館(とくにエールとコロンビア大学)に依拠しなければならないもの12点,オランダに依頼すべきもの3点,同定を断念すべきもの10点が残っている. 2.同定できたもののうち,タイトルのギリシャ語小文字については,字体が古く活字がわるいために,判読困難な部分があり,国原吉之助氏(名古屋大学西洋古典学教授)の指導により判読したが,なお確認に努力する. 3.最大部分を所蔵するエディンバラ大学が,全表題ページのコピーを提供する予定が,人手不足でおくれている.
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