Research Abstract |
本研究は, わが国の近代住居における領域区分の枠組みを家族の人間関係の秩序性に注目して住文化論的視点より考察することを目的としている. 本年度は, 当初住居の領域の公領域のみを対象にして調査分析を行う予定であったが, 私領域まで含めて調査を実施する研究計画の変更を行い, まが76世帯で予備調査を実施, 次に, その内の46世帯に対して詳細な立体的住み方調査(生活時間, 家晃の配置及び使用状況, 住み手の住意識や人間関係, だんらん風景)を実施, さらに8世帯でだんらんのビデオ撮影を実施した. 以上の調査データーをもとに, 本年度は基本分析を行い, 次の知見を得た. (1)一日断面の住生活時間の分析から家族成員の行為が同時的に重なる場を「居間」と規定し, その面積規模の分布傾向を検討したが, 住宅全体規模に応じて「居間」の拡大が行われていないこと, 対比的に私室, 特に子ども部屋の面積拡大傾向が強いこと, さらに「居間」の規模は一定段階を越えるとバラツキが大きくなっていることが明らかになった. (2)住生活時間量より「居間」の使われ方を分析した. まず, 絶対的な「居間」の滞留生活時間量では母親が最も多く, 次いで子ども, 父親と続く. これを全体の住生活時間量との比, 即ち「居間」の占有率でみると, 父親がきわめて高くなり, 「居間」が父親の居場所として機能していることを確認できた. (3)続いて, 住生活行為から「居間」の使われ方をみると, 主寝室の確立状況に関係なく, 「居間」への親, 特に父親の行為の持つ込み度合いが大きいことが明らかになった. (4)以上のように, 現在「居間」がだんらん空間として機能しながら, 空間概念的には親の主体系の性格を強く残しており, 「居間」での子ども中心主義的な行動様式の確立とそれを支持する家族の人間関係がわが国において成立していないことを示している.
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