1988 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62460024
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
大塚 洋一 東京大学, 低温センター, 助教授 (50126009)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 俊一 東京大学, 理学部, 教授 (90029471)
|
Keywords | メゾスコピック系 / アンダーソン局在 / アハラノフ・ボーム効果(AB効果) / 乱れた系 / 微細加工 |
Research Abstract |
サイズが1μm程度の導体では、たとえ原子尺度や平均自由行程に比べると大きいとしても、極低温では試料内で電子が非弾性散乱を受ける確率は小さく、従って電子波のコヒーレンスが「試料」全体に亘って保たれる。このような微細な系は、最近メゾスコピックな系と呼ばれ、従来の固体物理の常識とは異なった新しい現象がこの系で見つかっている。本研究では電子線リソグラフィー法を用い、1μm程度以下の微細な構造をもつ種々の形状の金属試料を作り、その電気的・磁気的性質を極低温で測定することによって、メゾスコピックな金属に特有な量子効果を調べることを目的としている。 本年度は、昨年度行った試料作製技術の習得、予備的実験の結果をうけ、電気伝導度のゆらぎに対する電界効果及び無電極リングの抵抗測定を行った。銀及びアンチモンを用い一辺1μmの角型リングを作り、さらに絶縁用ワニスをはさんで対向電極を付けた。リングの磁気抵抗を測定したとこと、弱局在による磁気抵抗に重疊して不規則なゆらぎ抵抗が観測された。さらに対向電極とリング間にDC電圧を加えたところ、アンチモン試料ではゆらぎのパタンがバイアス電圧と共に変化するのを観測した。この原因は印加電圧及びそれにより誘起された電荷により伝導電子の運動が変化したためであると考えている。 メゾスコピック系の物理にはマクロな電極の存在が本質的である場合がある。例えば局在に起因するAB効果の振巾は、無電極の場合、有電極の時と比べて大きく増大することが予想されている。これを調べるために直径1μmのアンチモンリングを多数製作し、その電磁的性質を無電極的方法で測った。磁場の関数としてリング系の交流損失を測ったが、現在の所有意なリングによる損失を見るには至っていない。今後感度の増大を図る必要がある。
|