Research Abstract |
原子レベルで平坦なシリコン酸化膜/シリコン界面を実現する条件を明らかにするために, 超高真空まで排気可能な真空槽を設計製作し, 電子ビームの加速電圧30kVの高速反射電子回折装置を装備した. この真空槽は, 900℃までの高温で低圧乾燥酸素中酸化が可能な構造とした. この実験のために, 以下の予備的検討を行なった. 先ず, Hahnらによる低速電子回折の実験結果を参考にして, 原子レベルのステップが少ない(100)面を用意し, その上に常圧酸素中800℃および1000℃において酸化膜を形成し, そのMgKα線励起光電子スペクトルを測定し, その解析より界面構造の酸化膜厚, 酸化条件, 熱処理条件依存性について検討した. その結果, 次の知見が得られた. すなわち, 酸化速度がストレス緩和速度より小さい場合には, 膜厚が大きいほど, また, 酸化温度が低いほど, 原子レベルで平坦な界面が形成される. 乾燥アルゴン中においても, また, 乾燥窒素中においても熱処理すると, 平坦度が低くなる. また, 酸化膜のエッチング速度が界面近傍で変化すること, また, その変化の仕方が, 酸化条件や熱処理条件に依存すること, さらに, このような現象が, 界面近傍のストレスの存在を反映しているらしいことなどが明らかになった. ZrMζ線励起光電子分光分析法についても予備的検討を行ない, 次の知見が得られた. 乾燥酸素または乾燥アルゴン中において熱処理すると, 酸化膜表面にサブオキサイドが現れる. また, 熱処理したものとしないものを化学エッチングを用いて深さ方向分析を行ない, 両者を比較すると, 表面近傍での酸化膜の構造に違いがあることが検出された. また, 自然酸化膜中のサブオキサイドの量は, 面方位にほとんど依存しないこと, (100), (110), (111)上での酸化速度を比べると, (100)面上での酸化速度が最も大きいことなどが明らかになった.
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