Research Abstract |
昭和62年度はフロンー113を作動流体とする実験ループを製作した. ループは循環ポンプ, 流量計, 予熱器, 試験部, 凝縮器及びそれらを継ぐ配管, 弁類より構成され, これに凝縮器二次側の冷却水を供給する冷水供給装置, フロン貯蔵タンク等が接続される. 試験部は, 円管, 二重管, 稠密格子炉心流路を模擬した異形管, 3本バンドル流路, 半周加熱円管の5種類である. 今年度はこのループについては機器の製作, 据付, 試験運転を行った. フロンー113実験に先立ち, 今年度は, 垂直円管内大気圧水の限界熱流束の実験も並行して行った. これより, 大気圧水の限界熱流束に対する流量, 入口温度および加熱部入口弁の絞りの効果が明らかになった. 加熱部入口弁の効果については, 絞りが十分大きければ(本実験では上流側圧力1.5気圧以上)流れは安定になり限界熱流来は絞りの影響を受けないことを確認した. しかし, 本実験における有効発熱長と加熱等価直径との比の値が小さいために, 限界熱流束は従束の相関式による値よりも低くなった. つぎに, 大気圧水の限界熱流束の発生メカニズムを調べるために, 二相流モデルを用いて限界熱流束を予測し, 実験結果と比較した. 低流量, 高クオリティ域では液滴発生と付着および蒸発による液膜消滅モデルは実験結果とほぼ一致するものの, 流量が増すにつれ, また, 有効発熱長が短かい場合にも一致は悪くなる. その場合には, 液膜破断あるいは剥離によりドライアウトが起こるものと推察される. 今後, 同様の実験を, 水およびフロンー113を作動流体として, 種々の流路形状を用いて実施し, 併せて理論モデルによる解析を行い, 限界熱流束に対する流路形状および圧力の効果を系統的に調べる予定である.
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