1988 Fiscal Year Annual Research Report
中性子散乱による蛋白質(BPTI)のコヒーレントなダイナミクスの研究
Project/Area Number |
62460237
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 雄而 東京大学, 物性研究所, 助教授 (10013517)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
太田 成男 自治医科大学, 講師 (00125832)
原田 三男 東京大学, 物性研究所, 助手 (90181023)
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Keywords | 蛋白質のダイナミクス / 重水素化蛋白 / DNA合成 / 中性子スペクトル変調法 / BPTI(牛膵臓トリプシン阻害酵素) |
Research Abstract |
蛋白質内部の動的プロセスの時空構造を直接中性子散乱の手法で調べるのが本研究の目的である。昨年度(第1年度)は、そのための準備として以下の3つのことを平行して進めて来た。1.蛋白質BPTI(牛膵臓トリプシン阻害酵素)のDNAの人工的合成。2.中性子散乱用蛋白試料としての全重水素蛋白の大量発現(大腸菌による)と分離・精製の基礎準備、3.蛋白の動的プロセスを観察するための新しい中性子散乱法(中性子スペクトル変調法)の開発並びに中性子スペクトル変調装置の建設。今年度は引き続き、これらの3つのプロジェクトを進めてさらにそれを統合させてBPTIのダイナミクスを調べるべく努力した。計画は上記1の部分で予想外の問題に遭遇したためいまだその目的を達する所には到っていないが、2、3の計画は予定通り進行し、とり合えずはBPTIの代りに好熱菌のATP合成酵素TF_1サブコンプレックスの重水素化と再構成に成功した。この再構成TF_1を用いて米国BNL国立研究所に於て、TF_1分子構造の溶液中の様相、またATP添加に伴う構造変化の直接観察に成功した。他方スペクトル変調装置の建設も完成(米国BNL国立研究所に日米協力事業の一環として)そのテスト実験を無事成功させた。1の問題は、合成遺伝子をプラミドに挿入、更に大腸菌に移してBPTIの発現をさせる段階で、何らかの理由で、BPTIが分解してしまうことが判明したことである。種々原因の追求を重ねて大量発現への状態を起こさせる努力を行ったが、現在迄の所不成功であった。理由は不明である。我々は今回自力でBPTIの発現ができなかったので、今後は外国グループからプラスミドをゆずり受け、重水培養と重水素化を行ない、中性子スペクトル変調法を用いて、そのダイナミクスを調べる予定である。
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Research Products
(2 results)
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[Publications] 伊藤雄而,原田三男,太田成男,香川靖雄,青野 修,J.Schefer;B.P.Schoenborn: Technical Report of ISSP(To be published in J.Mol.Biology). A2042. 1-58 (1988)
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[Publications] 伊藤雄而,A.I.Goldman,D.F.Majkrzak,L.Passell,M.A.Kelley,D.G.Dimmler: Technical Report of ISSP(Nuc1.and Methods). A2063. 1-47 (1988)