1987 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
62470013
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Research Institution | Osaka City University |
Principal Investigator |
西本 吉助 大阪市立大学, 理学部, 教授 (20046949)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
北浦 和夫 大阪市立大学, 理学部, 助手 (30132723)
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Keywords | プロトン移動 / 水素結合 / 互変異性化反応 / 反応機構 / シミュレーション / 溶媒効果 / 電子状態理論 |
Research Abstract |
プロトン移動反応は基本的な化学反応であるとともに, 蛋白貭や核酸においては生体での機能にかかわる重要な反応である. 本研究ではプロトン移動反応の基礎的研究として, ホルムアミド分子の1,3水素移動(互変異性化)反応について電子状態理論による研究を行い, 基産状態と励起状態では非常に異った溶媒効果を受けることを明らかにした. 計算は, 非経験的分子軌道法と配置間相互作用法を用いて行い, ホルムアラド分子の構造と, 1,3水素移動反応の反応経路にそったエネルギーを求めた. この反応は基底状態とmπ^*励起状態では軌道対称則から禁制であり, 起こりにくいが, ππ^*励起状態では許容になり, 反応が容易に進行することが予測される. 計算で得られた反応障壁は各々, 60, 65, 7kcal/molでありこれを裏づけている. ππ^*励起状態で活性化障壁が低くなるのは, C=O酸素の非結合質子がNーH結合の反結合性軌道に非局在化して遷移状態を大きく安定化することによる. 水溶液中では, 水分子との協奏的な分子間プロトン移動反応を経由した互変異性化反応の機構が考えられる. 計算で得られたこの反応機構の活性化障壁は, 基底状態で34kcal/molとなり, 先の分子内プロトン移動反応機構に比べて大きく(23kcal/mol)低下する. 一方, ππ^*励起状態では24kcal/molの活性化障壁となり, 分子内機構よりも17kcal/mol高くなる. これは, ππ^*励起状態での分子内プロトン移動の際にみられた, 反応を有利にする軌道相互作用が分子間プロトン移動では存在しないためである. 以上の結果から, 水分子は基底状態においてはホルムアミド分子の互変異性化反応を有利にする触媒として働くが, ππ^*励起状態では逆に反応を不利にすることが明らかになった.
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[Publications] Kazuhiko Honda: Chem.Phys.Letters. 140. 53-56 (1987)
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[Publications] Hidetsugu Tanaka: J:Mol.Structure(THEOCHEM).
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[Publications] Katsunori Sakurai: Theor.Chim.Acta.
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[Publications] Katsunori Sakurai: Chem.Phys.Letters.
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[Publications] Katsunori Sakurai: J.Math.Chem.
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[Publications] Katsunori Sakurai: Chem.Phys.Letters.